ビニロン(読み)びにろん(英語表記)vinylon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビニロン」の意味・わかりやすい解説

ビニロン
びにろん
vinylon

ポリビニルアルコール(略号PVA)を原料として得られた合成繊維に与えられた一般名称。1939年(昭和14)に京都大学の桜田一郎らによって発明されたもので、1950年に当時の倉敷レイヨン(現クラレ)から市販された。

 PVAはポリ酢酸ビニル加水分解して得られる水溶性高分子である。PVAを水に溶解し、硫酸ナトリウムの濃厚水溶液中にノズルから吐き出させ、適当な緊張延伸をかけながら巻き取る。このままの繊維は水に可溶であるから、まず繊維を130~200℃で熱処理してPVA繊維の結晶性を向上させ、次に酸の存在下、ホルムアルデヒドでホルマール化する。このホルマール化によって繊維の耐水性が向上し実用的な合成繊維ビニロンになる。

 性質は、繊維の高分子中にヒドロキシ基を残しているために、他の合成繊維に比べて親水性が高く吸湿性が大きい。強度はナイロンポリエステルに劣らず、耐摩擦性、耐久性に優れているが、アイロンによるセット性は低い。用途は、この特徴を生かして作業服、学生服、漁網ロープなどに用いられている。

垣内 弘]

『秋浜繁幸著『繊維補強コンクリート――新素材繊維を中心に』(1992・鹿島出版会)』『井上太郎著『へこたれない理想主義者 大原総一郎』(1993・講談社)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビニロン」の意味・わかりやすい解説

ビニロン
vinylon

ポリビニルアルコール (ポバール) を原料として,日本で創出した合成繊維の一般名。水に溶けやすい化合物のポリビニルアルコールから熱水にも安定性をもつ繊維をつくることが,1939年に京都大学,鐘淵紡績でそれぞれ成功,これを 48年にビニロンと命名,50年から各社で量産が始った。芒硝または硫安を主成分とする凝固液の中へ,ポリビニルアルコール水溶液を細い穴から押出して紡糸し,熱処理したのちホルマリンを作用させて熱水にも安定性を得る。性質は綿に近く,親水性で,酸,アルカリ,熱に強く,引張り力も高く,摩擦に強いなど,多くのすぐれた点をもち,漁網,タイヤコード,コンベヤベルト,ロープなど,おもに産業用に広く使用されている。

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