グラタンはフランス語のグラティネ(焦げ皮をはらせる)からきたことばとも、グラッテ(こそげる)という語からきたともいわれるが、焼き色をつけたり、皿の焦げ部分をこそげるところから名づけられた料理である。耐熱磁器・ガラスなどの浅い焼き皿に火を通した材料をソースで和(あ)えて平らに入れ、強火の天火の上段で焼き色がつくまで蒸し焼きした料理の総称である。材料は魚貝類、鳥獣肉類、野菜類、麺(めん)類など広範囲に使用される。材料によって、魚貝類のグラタン、チキングラタン、野菜のグラタン、麺類のグラタン、卵のグラタンなどがある。副材料にはキノコ類、カリフラワーなどが味の調和がよい。
材料を和えるソースは、アマダイ、シタビラメ、カキ、エビ、鶏肉、カリフラワー、マカロニ、ゆで卵など味の淡泊なものには白ソース、またはおろしチーズを加えたモルネソースがよい。牛肉、羊肉などには、酸味のきいたトマトソースのほうが味の調和がよい。調味ソースが全体の味を左右するので、おいしくつくることが望ましい。
付け合せの野菜は普通、用いないが、焼き皿の縁回りにマッシュポテトなどの裏漉(うらご)し野菜を絞り出して焼くこともある。焼き皿はグラタン皿といい、特殊な形をした耐熱磁器皿であるが、耐熱ガラス製、銀製のものもある。またパイ皮、食パンのくりぬいたもの、そのほか貝殻などを使う場合もある。調理上の注意点としては、焼いている間に水分の多く出るような材料は避ける。また魚と肉とは味があわないので、いっしょに混ぜて使わないこと。天火にはあまり長く入れて焼かないよう、強火の天火で上側に焼き色がつく程度でよい。
グラタンは焼きたてをナプキンを敷いた受け皿にのせて勧め、熱いところを食べるのがもっとも美味である。グラタンは一般には宴会料理には用いないが、イセエビを焼き皿とするグラタンは見栄えがよいので、結婚式などの料理にしばしば用いられる。また小さくつくって、温前菜にも用いられている。
[小林文子]
本来はなべ底にこげついた食物を指す言葉で,転じて材料とソースをグラタン皿に入れ,パン粉,おろしチーズを振り,さらに溶かしバターをかけ,表面に焼き色がついた薄膜がはるまで,オーブンで焼いた料理,およびその調理法をいう。材料としては,シタビラメ,ヒラメ,エビ,カニ,カキ,ホタテガイなどの魚貝類,肉やハム類,カリフラワー,ジャガイモなどの野菜類,あるいはマカロニ,米などを用い,多くの場合ゆでたりいためたりしておく。ソースはふつうベシャメルソース(ホワイトソース)か,これに卵黄とおろしチーズを加えたモルネーソースを用いる。器は耐熱性の陶磁ないしはガラス製のグラタン皿を使うが,ときには食パンをくりぬいたものやエビの殻を使うこともある。いずれもバターをよく塗っておく。ホタテガイの貝殻や同形の器を用いた場合は,とくにコキール(貝殻のフランス語コキーユcoquilleの転)と呼ばれる。オニオングラタンと呼ばれるのは,あめ色になるまでいためたタマネギ入りのコンソメスープに,パン切れとグリュイエールチーズを加えてオーブンで焼いたものである。
執筆者:辻 静雄
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…スイスの名物料理フォンデュはおろしたチーズを白ブドウ酒で煮溶かし,パンの小片を浸して食べるもので,エメンタールとグリュエールを使う。グラタンにはおろしチーズが欠かせないが,スパゲッティ,マカロニなども熱いところへミートソースやトマトソースをかけ,その上へ山のようにパルメザンをかけて食べる。サンドイッチではフランス風のクロックムッシューがある。…
※「グラタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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