サンタンジェロ城(読み)サンタンジェロジョウ(英語表記)Castel Sant'Angelo

デジタル大辞泉 「サンタンジェロ城」の意味・読み・例文・類語

サンタンジェロ‐じょう〔‐ジヤウ〕【サンタンジェロ城】

Castel Sant'Angelo》イタリアの首都ローマ中心部、テベレ川右岸にある城。対岸サンタンジェロ橋で結ばれる。135年にローマ皇帝ハドリアヌスが自らの霊廟れいびょうとして建造を始め、4年後にアントニヌス=ピウスが完成させた。以降、ローマ皇帝歴代の墓となる。中世以降、要塞化が進み、監獄として使われたこともあった。現在は国立サンタンジェロ博物館として公開され、古代から近代までの武器などを展示している。1980年、「ローマ歴史地区、教皇領とサンパオロフォーリ‐レ‐ムーラ大聖堂」の名称で世界遺産(文化遺産)に登録された。聖天使城。カステルサンタンジェロ

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改訂新版 世界大百科事典 「サンタンジェロ城」の意味・わかりやすい解説

サンタンジェロ城 (サンタンジェロじょう)
Castel Sant'Angelo

ローマ皇帝ハドリアヌスが自身とその一族のためにローマに建設した廟墓。〈聖天使城〉の意。135年に着工され,同帝の死後139年に完成。一辺84mの方形基壇の上に直径64mの円塔をのせ,その頂部を半球形ドームとして土を盛り,糸杉を植え,その中央に戦車を駆る皇帝像が置かれていた。エトルリア墳墓を継承するこの形式として最大の規模をもつ。590年,流行するペストからの救いを祈った教皇グレゴリウス1世がこの墓の上に大天使ミカエルの姿を見,その像を頂部に据えてからこの名が生まれた。中世以降,教皇の城塞兵舎獄舎に転用され,さまざまな政争と政治犯処刑の舞台となった。教皇庁舎とは城壁上の通路(15世紀末)で直結される。古代の外装と装飾彫像は失われ,外観も著しく変えられたが,現在なお当初の石積みを残し,内部は古武器,城塞,墓廟に関する博物館となっている。
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世界の観光地名がわかる事典 「サンタンジェロ城」の解説

サンタンジェロじょう【サンタンジェロ城】

イタリアの首都ローマ市内を流れるティベレ川右岸にある円形の要塞。城の頂上に、16世紀のラファエッロ・ダ・モンテルーポ作の大天使ミカエルの大理石像が建っている。ローマ市内唯一の城塞で、バチカンサンピエトロ大聖堂から徒歩圏内にある。もともとは135年に、ローマ帝国のハドリアヌス帝が自身の霊廟(れいびょう)として建設を開始し、4年後の139年に完成した建物だが、のちに軍事施設に変わり、14世紀ごろになるとローマ教皇の要塞や監獄として使われるようになった。1527年、神聖ローマ皇帝カール5世のローマ侵攻の際には、教皇クレメンス7世はこの城に立て篭もって抵抗した。また、地動説を唱えた哲学者・天文学者のジョルダノ・ブルーノ(1548~1600年)は、火刑に処せられる前の7年間、この城塞に幽閉された。現在、この城塞は軍事博物館(国立サンタンジェロ城博物館)になっている。なお、建物の頂上に建つ大天使ミカエルの大理石像はレプリカで、本物は場内にある。◇現地名は「Castel Sant'Angelo」。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンタンジェロ城」の意味・わかりやすい解説

サンタンジェロ城
さんたんじぇろじょう
Castel Sant'Angelo

ローマ市内テベレ川右岸、バチカン市国の手前に建つ城。別名ハドリアヌス廟(びょう)。ローマ皇帝ハドリアヌスが彼自身とその後継者たちの墓として建造したもので、135年ごろ起工、139年アントニヌス・ピウスが完成させた。84メートル四方の基壇の上に直径64メートル、高さ約30メートルの円筒形の建物を建て、その上にエトルリア式の盛り土をして樹木で囲った大墳墓には、セプティミウス・セウェルス帝に至る諸皇帝が埋葬された。ローマ帝国の崩壊後しばしば改造が加えられ、要塞(ようさい)や監獄として使用され、現在は武器博物館となっている。サンタンジェロの名称(「聖天使城」の意)は、590年ペストが流行した際、教皇グレゴリウス1世が城の頂に剣を持った大天使ミカエルの姿を見たという伝説に由来する。なお、この城のあるローマ歴史地区は教皇領、サンパオロ・フォーリ・レ・ムーラ教会とともに世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[篠塚二三男]


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