グレゴリウス1世(読み)グレゴリウスいっせい(英語表記)Gregorius I

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グレゴリウス1世」の意味・わかりやすい解説

グレゴリウス1世
グレゴリウスいっせい
Gregorius I

[生]540頃. ローマ
[没]604.3.12. ローマ
ローマ出身の第64代教皇在位 590~604)。聖人レオ1世らとともに大教皇と呼ばれる。四大ラテン教父(→教父)の一人であり教会博士。ローマ市の要職にあったが退き,私財を投じて七つの修道院を建て,そのなかの一つ聖アンドレア修道院で生活した。579年教皇ペラギウス2世により助祭に叙任され,教皇大使としてコンスタンチノープルに赴く。585年頃に帰国して聖アンドレア修道院長となり,590年に教皇に選出された。ローマ帝国の崩壊とランゴバルド族の侵入という激動期において,外交手腕によってイタリアに平和をもたらし,トスカナからシチリアにいたる所領を統一して教皇領の基礎を築き,教皇権を強化した。また教会内ではベネディクト会を広め,ベネディクト会士アウグスチヌスを派遣してイギリスでの布教に努め,典礼を改革し,後世に『グレゴリウス秘跡書』やグレゴリオ聖歌の名を残した。その著作,寓意的解釈に基づく『ヨブ記講解』Moralia in Iob(579~96)は中世における倫理神学,聖書解釈学の教科書となり,『司牧規則書』Liber regulae pastoralis(591)に示された理想と義務は中世の司祭職を律した。ほかにヌルシアのベネディクトを含むイタリア聖人伝『対話』Dialogi(594以前),エゼキエル書福音書の解説,854通の書簡を残している。祝日は西方教会では 9月3日,東方教会では 3月12日。

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