日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブンチョウ」の意味・わかりやすい解説
ブンチョウ
ぶんちょう / 文鳥
Java sparrow
[学] Padda oryzivora
鳥綱スズメ目カエデチョウ科の鳥。同科ブンチョウ属2種中の1種。全長約13.5センチメートル。スマトラ島、ジャワ島、小スンダ列島、モルッカ諸島、スラウェシ島、フィリピン、マレーシアなどに分布している。全体が濃灰青色であるが、頭部、風切(かざきり)、尾は黒色、頬(ほお)の大きな白斑(はん)が顕著。嘴(くちばし)と目の周りは赤紅色である。平野地帯に小群をなして生息し、草本の種子、穀物を好むが、昆虫などもとる。
日本には江戸時代に渡来し、愛知県名古屋を中心に下級武士の内職としてその巣引きが普及したといわれる。江戸末期になると、同県の海部(あま)郡弥富(やとみ)町の農家で大々的に生産されるようになり、ハクブンチョウ(白文鳥)もここで産出された。このように古くから輸入され飼育されているなかで、原種に近い色彩のものはナミブンチョウ(並文鳥)とよばれたが、これに対し、新しく輸入されるものは区別してユニュウブンチョウ(輸入文鳥)、ヨウブンチョウ(洋文鳥)、ダブンチョウ(駄文鳥)などといわれる。ハクブンチョウは嘴と目の周りだけが赤いが、色素を欠いた白変種ではない。ナミブンチョウとハクブンチョウを交配したものは、ナミブンチョウに白斑が現れた上品な羽色となりサクラブンチョウ(桜文鳥)とよばれる。じょうぶでもあるので一般に人気が高い。手のりブンチョウは孵化(ふか)後15日ぐらいで親から離し、訓練しつつ人工飼育したものである。ブンチョウとジュウシマツを交配したものをブンジュウ(文十)、ブンチョウとキンカチョウを交配したものをブンキンチョウ(文錦鳥)とよぶがいずれも繁殖力はない。籠(かご)抜けで野生化したものは東京、大阪そのほかに多く、インド、スリランカなどにも例がある。じょうぶで飼いやすいが、気が荒いのでほかの鳥といっしょにせず、飼育も庭籠(にわこ)のほうがよいようである。
[坂根 干]