ベニバナインゲン(読み)べにばないんげん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベニバナインゲン」の意味・わかりやすい解説

ベニバナインゲン
べにばないんげん / 紅花隠元
[学] Phaseolus coccineus L.

マメ科(APG分類:マメ科)の多年生つる草。豆や莢(さや)を食用にするため栽培され、日本など温帯では一年生である。中央アメリカの高地原産で、メキシコでは紀元前6000年ころから利用されていた。日本へは江戸時代の終わりころに伝来した。インゲンマメに似た草姿で、やや大形の3小葉からなる複葉長柄の先につけ、夏に葉腋(ようえき)から長い花軸を出して総状花序をつける。花は蝶形花(ちょうけいか)で長さ約2センチメートル、美しい朱紅色または白色。莢は長さ10~30センチメートル、幅2センチメートル余りで、大きく、中に長さ2センチメートルほどの長楕円(ちょうだえん)形の種子が数個ある。種子は暗紫色に黒い縞(しま)紋様で光沢があり、白色花のものの種子は純白で、この系統をシロバナインゲン(シロバナハナササゲ)とよぶ。花は夏咲くが、夜間は涼しくないと結実せず、関東地方以西では花を観賞用とするために栽培され、ハナササゲの別名がある。東北地方北部、長野県高冷地、北海道では種子が生産される。種子は煮豆、甘納豆、餡(あん)などにされ、若い莢は汁の実、煮物などにして食べる。熱帯で多年生のものは根がいも状に肥大し、これも食用にされるという。

星川清親 2019年11月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ベニバナインゲン」の意味・わかりやすい解説

ベニバナインゲン (紅花隠元)
scarlet runner bean
flower bean
Phaseolus coccineus L.

ハナササゲともいう。中央アメリカ原産の多年草。日本での栽培は一年草扱いとされ,若莢(わかざや)や豆を食用とする。17世紀にヨーロッパに伝わり,日本には江戸時代末期に渡来した。茎はつる状で,4mほどに伸び,葉は3枚の小葉からなる複葉である。小葉は先のとがった卵形で,長さ7~13cm。葉の付けねから15~20cmの柄が伸び,多数の紅色の美しい花が咲く。花が白色の品種があり,シロバナササゲvar.albus Baileyと呼ぶ。莢は10~30cm,中に2.5cmほどの扁平な種子(豆)が数個はいる。豆は紫色に黒い条斑がはいるが,シロバナササゲの豆は白色である。高温では開花しても莢ができない性質があり,このため夏季やや冷涼な土地で栽培される。霜にあたると枯れる。若い莢を野菜として食用にし,熟した豆は煮豆やあんなどにする。また,花が美しいので観賞用に栽培され,観賞専用の品種もある。
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栄養・生化学辞典 「ベニバナインゲン」の解説

ベニバナインゲン

 [Phaseolus coccineus].マメ目マメ科インゲンマメ属に属する.インゲンマメの一つ.食用にする.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベニバナインゲンの言及

【豆】より

…南アメリカ原産のインゲンマメはアフリカやインドでも主食的に利用される重要な豆類であるし,ボリビア原産のラッカセイは,その高い脂肪含有量のため広く食用にされ,どちらも世界の各地で栽培されている。その他にも〈もやし〉に多用されるインド原産のリョクトウ,若い豆果が野菜とされるアフリカ原産のササゲ類(ササゲ,ヤッコササゲ,ジュウロクササゲなど)や,熱帯アジア原産のナタマメやシカクマメPsophocarpus tetragonolobus(英名fourangled bean),それに加えて中央アメリカや南アメリカ原産のライマメPhaseolus lunatus(英名lima bean),ベニバナインゲン,インド原産のヒヨコマメフジマメ,アフリカ原産のキマメなど,多数の種が栽植され,利用されている。これら熱帯系の豆類のうちのいくつかは,温帯圏での夏作作物となっており,日本でも栽培されている。…

※「ベニバナインゲン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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