日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルグリット」の意味・わかりやすい解説
マルグリット(兄弟)
まるぐりっと
兄ポールPaul Margueritte(1860―1918)、弟ビクトールVictor Margueritte(1866―1942)ともにフランスの作家。ポールはゾラに師事、回想記『父』Mon père(1884)で文壇にデビューしたが、1887年ゾラの『大地』を批判する「5人宣言」に署名、自然主義との決別を表明した。だが1870年のプロイセン・フランス戦争に取材した四部作『ある時代』Une Époque(1898~1904。弟ビクトールと合作)や代表作『人間の弱さ』La Faiblesse humaine(1908)などでは自然主義を脱していない。ビクトールは1908年以降、女性と人類の解放をテーマに独自で作品を発表し始め、なかでも『ガルソンヌ』(1922)は第一次世界大戦後の新しいタイプの女性を描いてベストセラーになったが、女主人公の性的放縦さが論議の的となった。ガルソンヌgarçonneとは、男と対等の権利をもって生きる女の意。
[大久保敏彦]
『永井順訳『ガルソンヌ』(1950・創元社)』