ラブカ(読み)らぶか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラブカ」の意味・わかりやすい解説

ラブカ
らぶか / 羅鱶

軟骨魚綱カグラザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。ラブカ科Chlamydoselachidae(英名frill sharks)はラブカ属ChlamydoselachusのラブカC. anguineus1種のみと考えられてきたが、2009年に南アフリカ海域からアフリカラブカC. africanaが報告され、1属2種となった。ラブカ属は体が非常に細長いこと、背びれが1基しかなく、しかも尾びれの近くで臀(しり)びれと対在していること、口が体の前端にあって大きく裂けていること、鰓孔(さいこう)が普通のサメより多く6対(つい)あること、鰓弁というえらの一部が鰓孔から突出していること、側線が溝状になっていること、各歯が内方に向かった3本の棘(とげ)状突起からなることなど、多くの特徴をもつ。これらの特徴はサメ類のなかでは特異的で、そのために「生きている化石」ともいわれることがある。

 種としてのラブカ(英名frill shark)は19世紀後半に相模湾(さがみわん)からの標本に基づいて発表された。その後しばらくはラブカが日本特産種と考えられていたが、世界で深海調査が行われるようになり、全世界的な分布をすることが明らかになった。生息場所は大陸棚大陸斜面の深海域で、水深1500メートルまで記録がある。生殖方法は卵黄依存型の胎生で、妊娠期間は2年に及ぶ。産まれるときの大きさは39~60センチメートルで、一腹の子は最大で15尾程度である。全長2メートルに達する。日本近海では、相模湾などではサクラエビ漁の網や延縄(はえなわ)で、東京湾では刺網(さしあみ)などで捕獲されるが、まれにしかとれないため産業的には利用されていない。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年9月時点)。

[仲谷一宏 2021年10月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ラブカ」の意味・わかりやすい解説

ラブカ (羅鱶)
frill shark
Chlamydoselachus anguineus

カグラザメ目ラブカ科の海産魚。和名は皮膚が滑らかで肌触りが毛織物ラシャに似るのに由来するといわれる。地方によってはカイマンリュウ,マムシ,トカゲなどとその顔つきの恐ろしさに基づく名が多い。英名は鰓孔(さいこう)からフリル状の鰓弁(さいべん)が一部分突出することに由来する。世界に1科1種のみで,日本,オーストラリア,南西インド洋,南アフリカ,北大西洋,南カリフォルニア,南アメリカの大西洋岸から報告されている。日本近海では銚子沖,伊豆諸島近海,相模灘,駿河湾,熊野灘から記録されている。

 全長2mほどになる。体はウナギ型に延長し,口が頭の先にある。鰓孔が6対で第1鰓孔は左右が連続する。鼻孔は頭の上面にあり,歯は後方に向いていて多数の尖頭をもつ。背びれは一つしかなく,しかも腹びれ同様体の後半部にある。側線が溝状になっており,脊索は円筒状であるなどの特異な形態をもつ。生きている化石などといわれ,原始的なサメとされる。卵胎生で,4月下旬から7月下旬にかけて子どもを生む。1腹の胎児数は6~12尾で,誕生時の大きさは全長60cmくらい。胎児期にはすでに鰓弁が鰓孔から露出する。深海性の頭足類を主要な餌とするが,ときには胃からヘラザメが見つかることがある。500~1000mの深さで底引網などにかかるが,生殖期には100~150mの浅いところに移動し,サクラエビ漁の網にかかる。ほとんど利用されていない。
サメ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラブカ」の意味・わかりやすい解説

ラブカ
Chlamydoselachus anguineus; frilled shark

カグラザメ目ラブカ科の海水魚。全長 2m。体は一様に暗褐色で細長く,頭部は縦扁,胴部はほとんど円柱状,尾部は側扁する。口は前方を向き大きく,歯は 3尖頭で同形。呼吸孔をもつ。眼に瞬膜がない。鰓孔は 6対。背鰭は体の後方にあり,尾鰭の先はとがる。深海性。胎生で,6~12尾を産む。全世界の深海で採集される。

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