イタリアのロマン主義を代表する作家A・マンゾーニの大作でカトリシズムのモラルをテーマにした長編歴史小説。1827年に初版、40年に決定版が出た。舞台は1628年ころのスペイン支配下のロンバルディア地方。コモ湖畔のレッコという村の貧しき農民の婚約者レンツォとルチーアは司祭に結婚式を拒否された。ルチーアを見そめていたその地方の領主の1人が彼女を奪おうとたくらんで手下の悪漢を送ったからである。2人は離れ離れに村を去り身を隠すことになったが、それぞれの波瀾(はらん)に富んだ遍歴の物語が、歴史的事実である当時の腐敗した社会や教会の情況や、飢饉(ききん)、ミラノでの民衆蜂起(ほうき)、戦争、ペストの流行などの深刻な事件のリアリスティックな記述の間に、巧みに織り込まれて展開してゆく。文豪の筆はフィレンツェのことばを模範にして、荘厳な趣(おもむき)をもつまでに洗練されていて、美しい。ルチーア誘拐に共謀したある堕落した領主がキリスト教へ回心したため、物語はその頂点で奇跡的に逆転し、捕らえられた彼女は彼の温情により救われた。主人公の2人はその後さらに紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、ハッピー・エンドに至る。
[山本まゆみ]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…イタリアの作家A.マンゾーニが1827年に著した歴史小説。《婚約者》の訳名でも知られる。1620年代の末,スペインの支配下にあった北イタリアのコモ湖の近くの村が舞台で,いいなずけの青年レンツォと娘ルチアとが結婚しようとした。…
※「婚約者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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