山葉寅楠(読み)やまはとらくす

精選版 日本国語大辞典 「山葉寅楠」の意味・読み・例文・類語

やまは‐とらくす【山葉寅楠】

楽器製作者。和歌山県出身明治二二年(一八八九)山葉風琴製造所(のち日本楽器製造株式会社)を設立オルガンピアノハーモニカを製造。日本の鍵盤楽器製作の父といわれる。嘉永四~大正五年(一八五一‐一九一六

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山葉寅楠」の意味・わかりやすい解説

山葉寅楠
やまはとらくす
(1851―1916)

日本における洋楽器製造の先駆者的企業家。江戸紀州藩士の三男として生まれる。明治維新後、長崎時計の修繕法を学んで、大阪の医療器具店に勤めた。そこの派遣修理店員として浜松に駐在中、アメリカ製オルガンの修理を手がけたことから、その自作を志し、1888年(明治21)日本最初の本格的オルガンの製造に成功。89年に合資会社山葉風琴製造所を設立、それを97年日本楽器製造株式会社(現、ヤマハ)に改組、ピアノやハーモニカの国産化も実現した。高品質の追求モットーとした事業理念から生み出された「ヤマハ」の製品は、各地博覧会で入賞するなど好評を博した。

[四宮俊之]

『御手洗清著『遠州偉人伝 第一巻』(1962・浜松民報社)』『鶴見正夫著、大塚茂吉絵『美しき旋律のために 「音」に生きた山葉寅楠と河合小市』(1982・PHP研究所)』

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朝日日本歴史人物事典 「山葉寅楠」の解説

山葉寅楠

没年:大正5.8.8(1916)
生年:嘉永4.4.20(1851.5.20)
明治大正期の実業家。日本楽器製造(ヤマハ)の創立者。紀州(和歌山)藩士山葉孝之助の3男として江戸に生まれる。長崎で時計製造技術を修得したのち,大阪に出て医療機械修理工となる。浜松病院の依頼で浜松に出向き,明治20(1887)年錺職人河合喜三郎と協力して浜松元城小学校のアメリカ製オルガンを修理,数カ月後には国産初の本格的オルガンを製作,知人らから3万円の出資を得て22年3月に合資会社山葉風琴製造所を設立。同社は24年に解散し寅楠の個人経営に移るが,30年9月には日本楽器製造株式会社(資本金10万円)を創立,社長に就任。32年ピアノ製作を意図し文部省嘱託として渡米,翌年同社製ピアノが宮内省御用品となる。大正期に入って日本楽器製造はハーモニカ製造を開始し,世界各地に輸出する。44年浜松市会議員に当選,市会初代の副議長に就任。<参考文献>磯部千司編『山葉寅楠翁』,御手洗清『遠州偉人伝』1巻

(沢井実)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山葉寅楠」の解説

山葉寅楠 やまは-とらくす

1851-1916 明治-大正時代の実業家。
嘉永(かえい)4年4月20日生まれ。時計,医療機器の修理を業とする。明治20年静岡県浜松でオルガンを修理したのを機に試作をはじめ,同年初の国産オルガンを製作。22年山葉風琴製造所を設立。30年改組して日本楽器製造(現ヤマハ)とし,初代社長。ピアノの国産化をすすめるなどヤマハの基礎をきずいた。大正5年8月8日死去。66歳。紀伊(きい)和歌山出身。出身。

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世界大百科事典(旧版)内の山葉寅楠の言及

【楽器製造業】より

…日本における近代的楽器製造は,日本楽器製造(現ヤマハ)の創業者山葉寅楠が1887年オルガン製作に成功したことに始まる。日本楽器製造は,ドイツから技術者を招いたり海外に社員を派遣して欧米の技術を吸収,第2次大戦で工場の大半を焼失したが,1960年代に入って,高度成長の波にも乗って急成長し,欧米諸国の楽器産業斜陽化をよそに,世界をリードするまでになっていった。…

【ピアノ】より

…製作の面では,西川虎吉がドイツとアメリカのモデルに倣って1887年ころに作製したものが国産第1号といわれている。続いて山葉寅楠(1851‐1916)が97年に日本楽器製造(株)(現,ヤマハ(株))を設立,アメリカに学んだ翌年の1900年にアップライト・ピアノを,02年にグランド・ピアノの製造・販売を開始した。この方面で貢献した人々にはこのほか,山葉直吉,松本新吉,松本広,福島琢郎,小野ピアノの小野好,そして第2次大戦後に独立工房を開いた大橋幡厳らがいる。…

【ヤマハ[株]】より

…1987年,日本楽器製造(株)からヤマハ(株)と改称。 1889年山葉寅楠(1851‐1916)によって設立された合資会社山葉風琴製作所がその前身。97年改組され日本楽器製造(株)となる。…

※「山葉寅楠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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