歴史認識問題(読み)れきしにんしきもんだい

百科事典マイペディア 「歴史認識問題」の意味・わかりやすい解説

歴史認識問題【れきしにんしきもんだい】

主として日本近代史上の重大事件,日韓併合・植民地統治・日中戦争第2次世界大戦ポツダム宣言受諾・東京裁判等及びこうした歴史的事件に関連して起こったさまざまな出来事について,韓国・北朝鮮・中国・台湾・東南アジア諸国などから提起される,日本国・日本社会・日本人がそれらをどのように認識しているかを問う問題をさして〈歴史認識問題〉という。歴史認識問題については,こうした国々以外とりわけ,第2次世界大戦で日本と戦い戦勝国となった米国をはじめとする連合国の国々からも,しばしば提起される。強制連行従軍慰安婦南京事件等戦時の一般住民の虐殺・捕虜虐待さらには沖縄戦における集団自決事件等についても,歴史認識問題が問われる。日本の近代史を総じて対外侵略と戦争の歴史ととらえ,それによって大きな被害を受けた側から,加害者である日本に対して自国の歴史をどのように認識し反省し若い世代に教育しているか否か,というかたちで提起されることが多い。また韓国や中国からの歴史認識問題提起には強く反発しながら戦勝国米国からの提起には口をつぐむというありかたも歴史認識問題に正面から向き合う姿勢とはいえない。歴史認識問題の提起は,過去の植民地支配と侵略戦争とその惨憺(さんたん)たる結末である敗戦についてその責任を戦後の日本国・日本社会・日本人がどのように引き受けてきたか,という戦後史そのものについての認識の問題ともならざるを得ない。日中戦争・第2次世界大戦の戦争犯罪を裁いた東京裁判におけるA級戦犯を合祀(ごうし)する靖国神社への政治家の参拝が韓国・中国から批判されるのもこの点である。一般的に時の権力が自国の歴史について極端な愛国心教育と結びつけ,排外的ナショナリズムを扇動するための手立てとする傾向はどこの国にも存在する。それを容認すれば,加害・被害を問わず国家間を超えた国民同士の歴史についての相互理解は進まない。しかし日本の近代が,大局的かつ客観的にみて侵略と戦争の歴史を生み出したことは否定しようのないことであり,とくに近隣諸国に大きな被害をもたらしたことは紛れもない事実である。多くの日本人自らがその犠牲となったことも間違いない。そうした結果を真摯に受け入れることが,歴史を〈謙虚に〉受け止めることであり,日本は国家として戦後〈民主主義平和主義国際協調主義〉をまがりなりにも一貫して維持してきたことを国際社会に誇ることができるのである。
→関連項目習近平

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