知里幸恵(読み)チリユキエ

デジタル大辞泉 「知里幸恵」の意味・読み・例文・類語

ちり‐ゆきえ〔‐ゆきヱ〕【知里幸恵】

[1903~1922]アイヌ文化伝承者。北海道の生まれ。真志保実姉著作にアイヌ神話の採録翻訳をまとめた「アイヌ神謡集」がある。

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20世紀日本人名事典 「知里幸恵」の解説

知里 幸恵
チリ ユキエ

大正期のアイヌ文化伝承者



生年
明治36(1903)年6月8日

没年
大正11(1922)年9月18日

出生地
北海道幌別村(現・登別市)

学歴〔年〕
旭川区立女子職業学校〔大正9年〕卒

経歴
伯母でアイヌ文化伝承者の金成マツに育てられる。大正7年伯母と祖母を訪ねてきたアイヌ語学・文学研究者の金田一京助を知り、9年から金田一の勧めでアイヌの口承文芸であるユーカラの記録を始める。11年5月自ら編簒した「アイヌ神謡集」(アイヌ語と日本語の対訳形式による13編)を持って上京、金田一家に寄属してその研究を助けるが、8月に心臓病を発症し、9月19歳で急逝した。死後、大正12年「アイヌ神謡集」が出版され、アイヌの世界を広く知らしめた。平成14年復刻本が刊行された。2年記念碑が建てられた。12年北海道登別市で初の遺品展「知里幸恵の世界展」が開催される。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「知里幸恵」の意味・わかりやすい解説

知里幸恵
ちりゆきえ
(1903―1922)

『アイヌ神謡集』の著者。北海道幌別(ほろべつ)郡登別(のぼりべつ)村(現、登別市)の生まれ。農・牧畜業の父高吉、母ナミの長女。金田一京助のアイヌ研究にユーカラのローマ字筆録で協力した金成(かんなり)マツ母方の伯母。また『分類アイヌ語辞典・植物篇(へん)』などの著者知里真志保(ましほ)は弟。幼時から旭川(あさひかわ)市近文(ちかぶみ)で聖公会の伝道師として布教活動をしていたマツのもとで育てられた。1918年(大正7)アイヌ語採集で来訪した金田一は彼女の才をみいだし、母方の祖母モナシノウクから伝えられた神謡の筆録と和訳を勧める。彼女の死の翌1923年に発行された『アイヌ神謡集』には13編の神謡が収められており、アイヌ語のローマ字表記の正確さと和訳の美しさに定評がある。

[藤本英夫]

『『アイヌ神謡集』(岩波文庫)』『知里幸恵遺稿集『銀のしずく』(1984・草風館)』『藤本英夫著『銀のしずく降る降る』(1973・新潮選書)』

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朝日日本歴史人物事典 「知里幸恵」の解説

知里幸恵

没年:大正11.9.18(1922)
生年:明治36.6.8(1903)
ユーカラの伝承者で,『アイヌ神謡集』(1923)の編訳者。北海道幌別村(登別市)生まれ。祖母のモナシノウクからアイヌ民族のユーカラを受け継ぎ,金田一京助の勧めでその文字化に努めた。遺稿の『アイヌ神謡集』(1923)には,アイヌ語と日本語の対訳形式で13編のそれを集録している。「銀の滴降る降るまはりに,金の滴降る降るまはりに……」で始まる有名なユーカラもあり,アイヌ民族自身によるその本格的記録として評価が高い。また,「序文」はアイヌ同化政策の本質をアイヌ民族の立場から象徴的に描いている。アイヌ語学者の知里真志保は弟。<参考文献>藤本英夫『銀のしずく降る降る』

(竹ヶ原幸朗)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「知里幸恵」の解説

知里幸恵 ちり-ゆきえ

1903-1922 大正時代のアイヌ文化伝承者。
明治36年6月8日生まれ。知里ナミの長女。知里高央(たかなか),真志保(ましほ)の姉。伯母の金成(かんなり)マツに旭川市の聖公会伝道所でそだてられる。祖母モナシノウクからきいたアイヌ神謡の採録と翻訳を金田一(きんだいち)京助にすすめられて「アイヌ神謡集」をまとめ,没後に刊行された。大正11年9月18日死去。20歳。北海道出身。旭川区立女子職業学校卒。

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367日誕生日大事典 「知里幸恵」の解説

知里 幸恵 (ちり ゆきえ)

生年月日:1903年6月8日
大正時代のアイヌ文学伝承者
1922年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の知里幸恵の言及

【金成マツ】より

…1956年紫綬褒章を受章。終生独身であったが,旭川の近文(ちかぶみ)では母の妹ナミの娘,知里幸恵(1903‐22,真志保の姉)を引き取り,進学させている。幸恵もモナシノウクのユーカラを受け継ぎ,《アイヌ神謡集》(1923)をまとめたが,その校正中に19歳で死去した。…

【知里真志保】より

…アイヌ民族出身の言語学者,民俗学者。アイヌの叙事詩ユーカラの伝承者として有名な金成(かんなり)マツをおばとし,《アイヌ神謡集》(1923)の知里幸恵(ゆきえ)を姉として,現在の北海道登別市に生まれた。金田一(きんだいち)京助の文法を出発点としながら独自のアイヌ語文法体系を構築し,またJ.バチェラーや永田方正など先人のアイヌ語,地名研究を鋭く批判した。…

※「知里幸恵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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