特有な皮膚症状と高率に皮膚癌(がん)の発生をみる常染色体潜性遺伝性の光線過敏性皮膚疾患で、発生頻度は6万5000人から10万人に1人。大多数は幼児期から日光照射により主として顔面や手の甲などの露出部皮膚に、異常に強い炎症反応(紅斑(こうはん)、ときに水疱(すいほう))を生ずる。この炎症反応を反復するうちに、しだいに同部にびまん性色素沈着、雀卵斑(じゃくらんはん)(そばかす)様小色素斑の多発をみるとともに、同部の皮膚が乾燥してざらつき、小脱色素斑を含む萎縮(いしゅく)や毛細血管拡張も加わって一種の多形皮膚萎縮症の状態となる。こういった皮膚に多数の皮膚悪性腫瘍(しゅよう)が発生する。そのほか、角結膜炎や眼瞼(がんけん)外反などの眼症状、知能障害や運動障害などの神経症状、発育不全といった症状を伴うことが多い。ただし、臨床症状、予後は、病型によって異なる。1968年クリーバーJ. E. Cleaverは、患者の皮膚培養細胞は紫外線によって生じたDNA(デオキシリボ核酸)の傷(正常でない構造)を修復できないことを発見した。現在では本症は原因遺伝子の種類が異なるAからGまでの7群の遺伝子相補性群とバリアント型の計8型に分類されている。A~G群はそれぞれ、紫外線によるDNA損傷(おもにピリミジン二量体)の除去修復機構で働く異なったタンパクの遺伝子に異常がある。バリアント型では、このDNA損傷除去修復能に異常はないが、DNA損傷を乗り越えてDNAを複製する別のDNA修復機能に異常がある。治療は、極力日光の直射を避け、悪性腫瘍の早期治療を行う。医療費助成対象疾病(指定難病)に指定されている。
[土田哲也]
…紫外線によるDNA損傷の修復には,ここで述べた“除去・修復”のほかにも,DNAの組換えが関与した別の機構も存在する。DNA修復の酵素系に欠損のある場合,その個体は紫外線に対して異常に高い感受性をもつことになる(ヒトの遺伝病である色素性乾皮症など)。 DNA修復においては,正常な細胞でも,必ずしも完全に元の状態に戻らないということは注意する必要がある。…
※「色素性乾皮症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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