光線過敏症(読み)こうせんかびんしょう(英語表記)photodermatosis
photosensitive dermatosis

精選版 日本国語大辞典 「光線過敏症」の意味・読み・例文・類語

こうせん‐かびんしょう クヮウセンクヮビンシャウ【光線過敏症】

〘名〙 アレルギー反応一つ。たとえば、薬をのむと、顔や手などの日光にあたる部分が赤く腫(は)れ、なおったあとでも色素が沈着する。日光皮膚症。

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デジタル大辞泉 「光線過敏症」の意味・読み・例文・類語

こうせん‐かびんしょう〔クワウセンクワビンシヤウ〕【光線過敏症】

ふつうでは異常を起こさない日光の照射量で皮膚が赤くはれたりかゆくなったりする症状。薬の服用によるアレルギー性のものと、薬・化粧品などを外用しているために起こるものとがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「光線過敏症」の意味・わかりやすい解説

光線過敏症 (こうせんかびんしょう)
photodermatosis
photosensitive dermatosis

ヒトが一定量以上の紫外線を受けると日焼けなどの光線皮膚障害を起こすが,少量の光線で皮膚障害を起こす場合を光線過敏症という。より厳密に定義すれば,光線に対して皮膚が量的または質的に異常に反応する状態ということになる。原因となる光の作用波長は,日光光線では290~380nmの紫外線が主であるが,ときに可視光線が関係することもある。

光線過敏症は外因性と内因性の二つに大別される。外因性のものは,光感作物質が外から皮膚表面につくか,いったん体内に入ってから血液を介して皮膚に達するために起こる。皮膚表面に作用するのは,化粧品(オーデコロン,香水),香料(ベルガモット油),植物の汁(イチジクセロリ),ハロゲン化フェノール化合物などの殺菌剤,タール,色素(アクリジン,エオジン)などがあり,体内に入ってから作用するものとしては,薬剤(サルファ剤フェノチアジンクロルプロマジングリセオフルビンなど),食品(そば)などがある。また,内因性のものは,慢性多形日光疹日光蕁麻疹じんましん),種痘様水疱症,色素性乾皮症,ポルフィリン症ペラグラ,ブルーム症候群,コケイン症候群,全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎などの病気によって起こる。発症機序としては,(1)光毒性phototoxic,すなわち皮膚に存在する光感作物質(光線を吸収してエネルギーを放出するもの)のために障害を起こす場合(ソラレン,タールなど),(2)光アレルギー性photoallergic,すなわち皮膚内のある物質が光化学的に変化し,タンパク質と結合して抗原性をもち,抗原抗体反応を引き起こす場合(フェノチアジン,ハロゲン化フェノールなど),(3)メラニン色素の減少による光防御能低下(白皮症,フェニルケトン尿症,尋常性白斑など)で,メラニン色素が少ない白人は光線過敏の度が高い,(4)酵素欠損による紫外線損傷DNAの修復能低下(色素性乾皮症)がある。

顔,耳,頸,上胸,手背,下腿など日光に当たる部に限って紅斑,浮腫,丘疹,水疱をつくり,灼熱感やかゆみを生ずるのが特徴で,長年反復するうちに色素沈着,皮膚萎縮,毛細血管拡張,瘢痕(はんこん)を残す。さらに良性~悪性の皮膚腫瘍を生ずることがある。光線過敏症に対する特殊な検査には,最小紅斑量の測定,光貼布試験,光内服試験などがある。最小紅斑量とは,背中の数ヵ所にそれぞれ15秒,30秒,45秒,1分,1.5分,2分……と光線を照射して,24時間後に紅斑が発生する最短時間を指す。

原因となる物質があればそれを除くことが大切であるが,なによりも遮光することが最も重要である。帽子,傘,通風のよい衣服を着るなどのほか,光線遮断剤(サンスクリーン,〈日焼止め〉)を塗布するとよい。中波長の紫外線の遮断に最も有効なのはパラアミノ安息香酸とその誘導体であり,長波長の紫外線~可視光線の遮断には二酸化チタン,タルク,酸化亜鉛など細粒子による物理的散乱が有効である。これらを配合していろいろな遮光クリームが市販されている。またβ-カロチンを内服すると皮膚に沈着して遮光効果がある。
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百科事典マイペディア 「光線過敏症」の意味・わかりやすい解説

光線過敏症【こうせんかびんしょう】

ふつうは異常を生じない量の光線によって,皮膚症状を生じる疾患。原因不明のものには日光蕁麻疹(じんましん),多形日光疹などがある。また,光エネルギーによって活性化し過敏症を引き起こす光感作物質(ソラレンなどのフロクマリン類),テトラサイクリン,フルオウアラシルなどの服用,外用によっても,日焼け様の皮疹が生じる。エリテマーデスや肝斑(しみ)のように,光線によって増悪するものを含める場合もある。

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知恵蔵mini 「光線過敏症」の解説

光線過敏症

日光を浴びることで皮膚に赤みや炎症、かゆみを伴う発疹などの免疫反応が生じる疾患の総称。「日光アレルギー」とも呼ばれる。通常なら問題が生じない程度の日光量でも、露出部の皮膚にのみ症状が現れる。発症の原因は紫外線や薬剤などに対するアレルギー、先天的な代謝異常、遺伝子の変異、特定遺伝子の保有など様々で、原因が解明されていないものもある。治療法は原因によって異なるが、いずれにおいても直射日光を可能な限り避けることが重要とされる。

(2019-4-16)

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世界大百科事典(旧版)内の光線過敏症の言及

【日焼け】より

…長期間にわたって日焼けを繰り返していると,皮膚の結合組織が障害されてしわの多い皮膚となり,さらに前癌症状や皮膚癌を発生しやすくなるので注意すべきである。また,少量の日光光線でも日焼けを起こす場合を光線過敏症というが,遺伝性の色素性乾皮症,ポルフィリン症などの代謝異常症,エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病,薬剤による薬疹の一種など,特殊な病気がひそんでいることも考えられるので,診察・検査をうける必要がある。【藤澤 龍一】。…

※「光線過敏症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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