遠足(読み)エンソク

デジタル大辞泉 「遠足」の意味・読み・例文・類語

えん‐そく〔ヱン‐〕【遠足】

[名](スル)
学校で、運動や見学を目的として、教師の引率で行う日帰り小旅行 春》
遠い所まで出かけること。
「家弟をつれて多摩川の方へ―したときに」〈独歩武蔵野
[類語]ピクニックハイキング遠出

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遠足」の意味・読み・例文・類語

えん‐そく ヱン‥【遠足】

〘名〙
① 歩いて遠くに行くこと。遠歩。また、遠くまで足を延ばすこと。遠方に行くこと。
滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)二「今日遠足(ヱンソク)どもいたして」
② 学校で、教育活動として校外に出かけること。《季・春》
風俗画報‐一七四号(1898)詞林「えんそくの運動会の紀行さへはしりかきにもする女学生」
[語誌](1)明治一八年(一八八五)、文部省御用掛であった森有礼が「教室外の教育」の重要性を説き、その一つとして②が考えられた。明治一九年に東京師範学校において中小学両師範学科生徒による千葉県下への「長途遠足」が初めて行なわれた。今日の修学旅行の最初といわれる。
(2)明治の半ば頃、小学校の連合運動会の会場までの往復に端を発し、明治後半頃から各校別の学校行事として定着する。
(3)俳句では明治以降、春の季語として用いられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「遠足」の意味・わかりやすい解説

遠足 (えんそく)

レクリエーション,自然環境とのふれあい,および身体の鍛練や集団規律の訓練などを目的として,教師の主導のもとに,ほぼ1日行程で行われる子どもたちの集団的な校外活動。見学や観察など学習目的が限定された半日以内の行程のものを〈校外学習〉,宿泊をともなうものを〈修学旅行〉と呼んで区別する場合がある。欧米では19世紀にヘルバルト派教授論の影響下で校外学習と一体に行われ,20世紀には新教育思想の下で自然とのふれあいを強調して,英米ではschool excursion,ドイツではSchulausflugなどの名で行われた。日本では,各校連合して開かれた小学校の運動会での会場までの往復に端を発し,明治後半ころから各校別の学校行事として定着をみる。小学校では原則として宿泊をともなう旅行が禁じられていたので,遠足は数少ない校外行事であった。目的地への往復においては当初から身体鍛練や集団訓練の性格が強かったが,目的地に着いてからの自由行動では庶民のレクリエーション慣行としての〈遊山〉の要素がとり入れられ,子どもたちにとって一般に最も楽しい学校行事となった。しかし,昭和初期以降の戦時体制下では,〈遊山〉的要素は消え,もっぱら鍛練的側面が強調される〈行軍〉的性格が濃厚となり,戦争の激化した1943年ころからは,遠足自体が廃止され勤労奉仕にとって代えられた。第2次大戦後は,交通事故頻発レジャー産業の盛行にともない,徒歩によらず貸切バスで一挙に目的地に赴く〈観光〉的な行事へと変わりつつある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠足」の意味・わかりやすい解説

遠足
えんそく

教師が児童・生徒を校外に引率して、さまざまな実地の経験や見聞をさせることをいい、通常は幼稚園から小・中学校段階にかけて行われる日帰りのものをさす。

 明治以降の近代学校制度のもとでの遠足は、(1)伝統的な初詣(はつもう)で、花見、遊山といった民間行事の系譜を引く娯楽的な性格と、外来の隊列運動、すなわち隊伍(たいご)を整えて行進することによる集団訓練的な性格、(2)自然の観察・観賞、(3)歴史的、文化的な遺産や施設の見学という校外学習的な性格、の三者が時代と社会の変化に応じて、相互に関連しあって定着、普及したものである。今日でもこの基本的な性格は変わらないが、交通機関の発達につれて、バスや電車を利用して遠くまで出かける例も多い。また、そのときどきに、三つの性格のいずれかを強調したり、学年単位に実施したりするなど、その目的や形態も多様化しつつある。

[井上治郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遠足」の意味・わかりやすい解説

遠足
えんそく
school excursion

学校行事の一環として,教師が生徒を引率して日帰り程度で校外に出かけること。遠足に教育的意義が付与されたのは,欧米では 16~17世紀にさかのぼることができ,19世紀にヘルバルトの実験学校で実施されて広まった。日本では明治初期,いくつかの小学校が合同で運動会を開催していた頃,離れた小学校まで集団で歩いていくことを遠足と呼んだ。それが教育的意義を持つ学校行事となったのは,ヘルバルトの教育理論が輸入された 1890年代以降である。現在,日本のように特別活動に位置づけられ,組織化された遠足が行われる国は多くはない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の遠足の言及

【修学旅行】より

…学校の公式行事として教職員の引率のもと,校外教育・学習の目的をもって学生,生徒,児童が集団で行う旅行。共同宿泊をともなう点で遠足と,また学習目的が複合的であり複数の目的地を周遊する点で臨海学校林間学校,合宿などと区別される。C.G.ザルツマン,シュトイKarl Volkmar Stoy,ラインWilhelm Reinらドイツの教育者により,18世紀後半から19世紀にかけて自然学習および身体訓練の目的をもって唱道され組織された徒歩旅行Wanderungen,教育旅行pädagogischer Reisenなどの影響を受けつつも,日本独特の性格をもつ学校行事として展開された。…

※「遠足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android