略称EPR。エチレンとプロピレンの共重合系合成ゴム。エチレンとプロピレンの共重合ゴムをEPM,これに第三成分としてジエンモノマーを加え三元共重合体としたゴムをEPDMとよび,現在は後者が主流である。EPM,EPDMをまとめてエチレン・プロピレンゴムとよぶことが多い。EPRはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物を組み合わせたチーグラー触媒を含む炭化水素溶媒中にエチレンとプロピレンの混合ガスを吹き込んで共重合させることによって得られる。EPDMの場合は,これに第三成分を添加した系で三元共重合を行う。第三成分としてはエチリデンノルボルネン,ジシクロペンタジエン,1,4-ヘキサジエンなどの非共役ジエンモノマーが使用される。このため三元共重合体の側鎖にのみ二重結合が導入されるので,耐オゾン性など本来のEPRの特性をそこなうことなくEPDMには硫黄加硫性が付与され,他のジエン系ゴムとブレンドして使用することも可能になった。EPM,EPDMは耐オゾン性,耐候性,電気的性質にすぐれている。とくに耐オゾン性はクロロプレンゴムやブチルゴムなどよりすぐれている。このような性質をもつことからラジエーターホース,ワイパーブレード,窓枠などの自動車用部品,電線被覆,耐熱性コンベヤベルト,耐熱ホース,耐薬品ホースなどの工業用品,建築用ルーフィング材などに広く使用されている。
執筆者:住江 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
エチレンとプロピレン(6対4~7対3)をツィーグラー(チーグラー)系触媒で共重合した非晶性高分子。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称はEPM。これは分子内に二重結合がないので、架橋は過酸化物によって行われる。通常の硫黄(いおう)による加硫を可能にするため、エチレンとプロピレンのほかに、第三成分として1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、あるいはエチリデンノルボルネンなどの非共役ジエンを5%以下加えた三成分共重合体が工業化されている。EPDM(ethylene-propylene diene methylene linkage)、あるいはEPT(ethylene-propylene terpolymer)とよばれる。特殊ゴムではもっとも多量につくられている準汎用(はんよう)ゴムである。EPDMは飽和炭化水素に近い構造をもっているので、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性が優れ、150~170℃での常用も可能である。また、耐寒性、低温特性もよく、零下55℃でも可撓(かとう)性があり、耐薬品性や電気特性もよい。欠点は、加硫速度が遅いこと、粘着性や接着性が劣っていることである。用途は、電線の被覆、防水シート、タイヤのサイドウォール、自動車部品(ラジエーターホースなど)、工業用品、建築材料、PP(ポリプロピレン)バンパーの耐衝撃性改質材などである。
[福田和吉]
EPDM(ethylene propylene diene methylene linkage)またはEPRと略記される.合成ゴムの一種で,エチレンとプロピレンの共重合体である.チーグラー-ナッタ触媒を用いてつくられ,両成分の配列はランダム配列であることが望ましく,その比は60:40ないし40:60である.また,加硫をしやすくるために第三モノマー成分としてジエン類を含むものもある.耐熱性,耐老化性,耐候性,耐オゾン性,電気的特性および低温脆化性がよいので,主として電線,電気部品,工業用品として用いられる.[CAS 9010-79-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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