デミル(英語表記)Cecil Blount De Mille

精選版 日本国語大辞典 「デミル」の意味・読み・例文・類語

デミル

(Cecil Blount DeMille セシル=ブラント━) アメリカの映画製作者、監督。大規模なスペクタクル映画を手がけた。代表作「十戒」「大平原」「サムソンデリラ」。(一八八一‐一九五九

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改訂新版 世界大百科事典 「デミル」の意味・わかりやすい解説

デミル
Cecil Blount De Mille
生没年:1881-1959

スペクタクルの巨匠〉の名をほしいままにしたアメリカの映画監督,製作者。ブロードウェー劇作家であり演出家のデービッド・ベラスコの薫陶を受け,1913年に映画界へ入り,第1回監督作品《ザ・スコー・マン》(1913)が成功して以来,もっぱらベラスコの作品を映画化した。第1次世界戦後のアメリカは享楽的な消費文化の時代を迎えるが,大衆の好みを察知して,《男性と女性》(1919),《何故妻を換へる?》(1920)などの〈風俗映画〉をつくった。しかし,ハリウッドスキャンダルの都として社会の批判を浴びて自粛が叫ばれると,一転して聖書に題材をもとめた製作費100万ドルを超える超大作《十誡》(1923)をつくり,〈スペクタクル映画〉の〈巨匠〉デミルが誕生する。共和党の熱烈な支持者でもあったデミルは,30年代の後半から第2次大戦にかけて〈開拓精神とデモクラシー高揚〉と自称する主題の娯楽大作を多くつくった(《大平原》1939,《征服されざる人々》1947,等々)。戦後もスペクタクル史劇のブームをよみがえらせた大作《サムソンとデリラ》(1949),サーカスの世界を一大スペクタクル絵巻に仕上げた《地上最大のショウ》(1952)などのヒット作を放ち,カラーで再映画化された《十戒》(1956)が最後の作品でありヒット作となった。ハリウッドはデミルとともに一つの時代を終えたといわれ,デミルその人が〈地上最大のショウ〉であったと評されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デミル」の意味・わかりやすい解説

デミル
DeMille, Agnes George

[生]1905.9.18. ニューヨーク
[没]1993.10.6. ニューヨーク
アメリカの舞踊家,振付師。 M.ランバートらに師事し,ダンサーとして活躍したのち,振付師として出発。『黒い儀式』 (1940) ,『ロデオ』 (42) ,『山中の風』 (65) をバレエ・シアターなどのために作る。またミュージカルの振付師として『オクラホマ!』 (43) ,『ブリガドゥーン』 (47) を担当,映画『ロミオとジュリエット』 (36) ,『オクラホマ!』 (55) などを手がけた。 73年,ノースカロライナ芸術学校を基盤にヘリテージ・ダンス・シアターを創設。著書に『ダンス・トゥ・ザ・パイパー』 Dance to the Piper (52) ,『若き舞踊家へ』 To a Young Dancer (62) ,『舞踊の本』 The Book of the Dance (63) ,『アメリカの踊り』 (81) などがある。

デミル
DeMille, Cecil B.

[生]1881.8.12. マサチューセッツ,アシュフィールド
[没]1959.1.21. カリフォルニア,ロサンゼルス
アメリカ合衆国の映画監督,制作者。フルネーム Cecil Blount DeMille。1913年ジェシー・L.ラスキー,サミュエル・ゴールドウィンらと映画会社(のちのパラマウント映画)を興した。『スクォーマン』The Squaw Man(1914公開)で監督としてデビュー。以後パラマウント映画の首席監督,制作者として,スペクタクル映画を手がけた。主作品『十戒』The Ten Commandments(1923,1956),『地上最大のショー』The Greatest Show on Earth(1952,アカデミー賞作品賞)。

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百科事典マイペディア 「デミル」の意味・わかりやすい解説

デミル

米国の映画監督,製作者。1913年に映画界入りし,《男性と女性》(1919年)などエロティックな〈風俗映画〉で物議をかもす。1923年には聖書に題材をもとめた超大作《十誡》を発表し,〈スペクタクルの巨匠〉となる(1956年《十戒》としてカラーで再映画化)。ほかにも《大平原》(1939年),《征服せざる人々》(1947年),《サムソンとデリラ》(1949年)などの娯楽大作を製作し,ハリウッドを代表する監督として名声を得た。

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世界大百科事典(旧版)内のデミルの言及

【サムソンとデリラ】より

…1949年製作のアメリカ映画。《暴君ネロ》(1932),《クレオパトラ》(1934)に続いてセシル・B.デミル監督が1935年に企画した古代史劇で,戦後,1948年になってV.ヤボチンスキーの《士師と愚者》を原作にして〈ドラマ〉を組み立てた。当時76歳のA.ズーカー社長をはじめパラマウントの幹部は,イスラエルの士師サムソンが愛人デリラに欺かれてペリシテ人の手に渡るという旧約聖書の伝説を〈冷戦〉の幻滅の時代に映画化することに消極的であったが,デミルは大男サムソンに扮したビクター・マチュアと妖艶な美女デリラに扮したへディ・ラマールの〈肉体美〉を売物に,華麗な色彩によるスペクタクル大作として完成した。…

【十戒】より

…日本公開時のタイトルは《十誡》。セシル・B.デミル監督の最初のスペクタクル史劇。1920年代のハリウッドで社会の批判にこたえる自主規制が叫ばれたとき,それまで《男性と女性》(1919),《何故妻を換へる?》(1920),《禁男の果実》(1921)等々,その批判の対象である性風俗の乱れを描いた作品を次々と送り出していた当人のデミルは,それらの風俗劇と縁を切り,聖書を題材とした大作をつくることで批判の矛先をかわした。…

【スペクタクル映画】より

…とくに後者はイタリアのサイレント映画の頂点を示す作品であり,著名な詩人,小説家,劇作家,軍人であったダンヌンツィオが荘重華麗な文学的字幕を書いたことでも知られ,スペイン出身の名カメラマン,セグンド・デ・チョーモン(1871‐1929)の移動撮影や,のちにハリウッドで〈レンブラント・ライティング〉と名づけられた人工光線による下からの仰角(あおり)ぎみの照明といった革新的な技術が各国の映画に大きな影響をあたえ,アメリカのD.W.グリフィスは《カビリア》のプリントを1本手にいれてつぶさに研究し,アメリカ最初のスペクタクル映画《国民の創生》(1915)と《イントレランス》(1916)をつくった。 スペクタクル映画はグリフィス以来,ハリウッドのお家芸になって今日まで続いているが,全映画史を通じてその最大の推進者となったのが〈スペクタクルの巨匠〉の名をほしいままにしたセシル・B.デミル監督である(他方,フランスにはほとんど狂い咲きのように大スペクタクル映画をめざしたアベル・ガンス監督の孤高の存在がある)。1920年代には西部の開拓者たちを描いた《幌馬車》(1923),聖書に取材したデミル監督《十誡》(1923),古代ローマの歴史を描いた《ベン・ハー》(1926),キリストの生涯を描いたデミル監督《キング・オブ・キングス》(1927),第1次世界大戦における空中戦を描いた《つばさ》(1927)などがスペクタクル映画としてつくられた。…

【スワンソン】より

…シカゴに生まれ,14歳でシカゴのエッサネイ撮影所にエキストラとして雇われ,17歳でハリウッドに赴き,マック・セネットの短編どたばた喜劇に出演(〈水着美人〉の一人であった)。19歳のとき,パラマウントで第1次世界大戦後の時代にふさわしい新しいヒロインを演ずる女優をもとめていたセシル・B.デミル監督に認められて,《夫を換ゆる勿れ》《連理の枝》《男性と女性》(ともに1919),《何故妻を換へる?》(1920)などの〈ベッドルーム・ファース(寝室喜劇)〉や風俗メロドラマに主演し,26年には週給が空前の2万ドルと噂された大スターになった。26年独立し,〈フィルム・ブッキング・オフィス・オブ・アメリカ(FBO)〉のJ.P.ケネディ(J.F.ケネディ大統領の父)の公私にわたる援助で〈グロリア・スワンソン・プロダクションズ〉を設立,ユナイテッド・アーチスツと契約して製作をはじめたが,エーリヒ・フォン・シュトロハイム監督が80万ドルを費やして中断せざるを得なかった《ケリー女王》(1928)で挫折(未公開に終わる)。…

【大平原】より

…1939年製作のアメリカ映画。スペクタクル映画の巨匠セシル・B.デミル監督の西部劇で,ジョン・フォード監督《アイアン・ホース》(1924)に次いで大陸横断鉄道建設を主題にした大作。1930年代後期のアメリカでは国民精神の鼓舞を意図した伝記映画が流行したが,デミルは西部開拓史の伝説的ヒーロー,ワイルド・ビル・ヒコックを主人公にした《平原児》(1937)につづいて,開拓時代の苦難を克服する建国精神を謳歌したこの作品をつくり,ユニオン・パシフィック鉄道の社長W.ジェファーズの全面的な協力をえて,徹底的な資料調査にもとづいてシナリオを書き上げた。…

【男性と女性】より

…1919年製作のセシル・B.デミル監督のアメリカ映画。第1次世界大戦直後のアメリカ女性の性風俗をもっとも大胆にエロティックに描いて,ハリウッド史上類のない物議をかもし,〈デミル伝説〉を生んだ風俗映画。…

※「デミル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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