有価証券取引税(読み)ゆうかしょうけんとりひきぜい

改訂新版 世界大百科事典 「有価証券取引税」の意味・わかりやすい解説

有価証券取引税 (ゆうかしょうけんとりひきぜい)

有価証券譲渡された場合に(贈与による譲渡を除く),譲渡者に対して有価証券取引税法に基づき課される国税国債地方債社債株券等の取引の背後にある担税力に着目して課される流通税で,1953年の税制改正で有価証券譲渡所得税に代わって創設された。課税標準は,売買の場合には売買価額,相殺等その他の場合は譲渡時の価額である。税率は,証券会社を通じた売買による譲渡の場合(第1種)と,証券会社を通さない,いわゆる相対(あいたい)などのその他の場合(第2種)に区分されており,国債にあっては第1種が1万分の1,第2種が1万分の3,株券にあっては第1種が1万分の12,第2種が1万分の30(ただし1996年4月1日から98年3月31日までに行われた譲渡については,1万分の21)とされている(1997年現在)。納付方法は,申告による納付(証券会社が納税義務者である場合),特別徴収による納付(証券会社でない納税義務者が証券会社への売委託により譲渡した場合または証券会社等へ譲渡した場合)および印紙による納付(証券会社等が関係していない場合で,有価証券取引額が10万円以下の場合)の三つがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有価証券取引税」の意味・わかりやすい解説

有価証券取引税
ゆうかしょうけんとりひきぜい

有価証券の取引が行われたときに、譲渡をした者を納税義務者とし、譲渡価額を課税標準として有価証券取引税法により課された国税で、流通税の一種である。有価証券の流通に対する課税は、1937年(昭和12)に税制改革一環として有価証券移転税が設けられたのに始まる。この税は、第二次世界大戦後の1950年(昭和25)にシャウプ勧告に基づいて廃止され、有価証券の流通から生ずる所得は譲渡所得として所得税課税の対象とされるようになった。しかし、有価証券の譲渡所得は把握が不完全で、適正な執行が困難であったため、1953年の税制改正において、有価証券の譲渡所得に対する所得税を廃止するとともに、流通税として有価証券取引税が設けられた。課税物件とされる有価証券というのは、国債証券、地方債証券、社債券、株券などである。その後、日本版金融ビッグバンの論議のなかで、取引コスト高の一因として撤廃の要望が強まり、99年4月に廃止された。

[林 正寿]

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百科事典マイペディア 「有価証券取引税」の意味・わかりやすい解説

有価証券取引税【ゆうかしょうけんとりひきぜい】

有価証券取引税法(1953年)に基づき,株や債券など有価証券の譲渡に対して課された国税。有価証券の譲渡益に対する所得税の課税廃止に伴い創設。納税義務者は譲渡人で,税率は譲渡価額の万分の21(公社債・貸付信託受益証券等の場合は万分の3)。日本版ビッグバンの外国為替管理法改正などにより,1998年4月から海外投資が自由化され,取引コストの安い海外へ資金が流出する恐れがあることから,税率は0.1%に引下げ。1999年4月からは有価証券取引税そのものが廃止された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有価証券取引税」の意味・わかりやすい解説

有価証券取引税
ゆうかしょうけんとりひきぜい

国債証券,地方債証券,社債券,株券など有価証券の譲渡が行われた場合に,その譲渡者に対して課税する流通税の一種 (国税) 。 1953年の税制改正で有価証券譲渡所得税に代って有価証券取引税法 (昭和 28年法律 102号) によって創設された。課税標準は有価証券の売買価額などで (9条) ,税率は証券会社を譲渡者とする売買による譲渡であるかどうか,および有価証券の種類によりそれぞれ一定率が定められている (10条) 。

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