梨園(読み)リエン

デジタル大辞泉 「梨園」の意味・読み・例文・類語

り‐えん〔‐ヱン〕【梨園】

なしの木を植えた庭園
《唐の玄宗皇帝が梨の木のある庭園で、みずから音楽・舞踊を教えたという「唐書」礼楽志の故事から》俳優社会。特に、歌舞伎役者世界。「梨園名門

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精選版 日本国語大辞典 「梨園」の意味・読み・例文・類語

り‐えん ‥ヱン【梨園】

〘名〙
① 梨の木の植えてある園。梨の畑。〔三輔黄図
② (唐の玄宗が梨の木のある園で自ら舞楽を教えたという「唐書‐礼楽志一二」から) 俳優の社会。演劇界劇壇。特に、歌舞伎役者の世界。また、役者をいうこともある。
菅家文草(900頃)五・早春、観賜宴宮人、同賦催粧「梨園弟子之奏舞唱歌、一事一物、儀在其中
太平記(14C後)四「堂下の立部袖を翻し、梨園(リヱン)の弟子曲を奏せしむ」

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改訂新版 世界大百科事典 「梨園」の意味・わかりやすい解説

梨園 (りえん)

役者,演劇の社会をいう。《旧唐書》音楽志,《新唐書》礼楽志によると,音律にくわしく,法曲を好んだ唐の玄宗は,太常寺坐部伎の子弟300人を選び,梨の木を植えた庭園でみずから教え,ひと声まちがっても聞き分けて必ず訂正したという。この楽工たちを,梨園の弟子とよんだのにはじまり,これからしだいに意味が転じ,明・清時代には役者,演劇の社会を指す言葉となった。
執筆者: なお日本では,江戸時代に漢学者が演劇界を衒学的に梨園と呼んだといわれる。明治以降は,とくに歌舞伎界をさしていう語になり,ときには歌舞伎そのものを意味することもある。一般演劇に対してはあまり使われない。
執筆者:

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故事成語を知る辞典 「梨園」の解説

梨園

演劇界、特に歌舞伎の世界を指すことば。

[使用例] 梨園には団十郎菊五郎、左団次、団蔵そのほかの各方面ともそれぞれ名人級の人々に乏しくなかった[山本笑月*明治世相百話|1936]

[由来] 「旧唐書―音楽志・一」に見えるエピソードから。八世紀、唐王朝の時代の中国の皇帝、玄宗は、音楽が好きでしかも理解がとても深く、宮中の「梨園」という場所に音楽家たちを集めては、自ら指導して演奏の練習をしていました。そこで、彼らは「梨園の弟子」と呼ばれたということです。ここから、音楽や舞踊の世界のことを「梨園」と呼ぶようになりました。日本では、伝統的な総合芸術、歌舞伎の世界を指して使われます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「梨園」の意味・わかりやすい解説

梨園
りえん

演劇界、劇壇の意。中国、唐の玄宗(げんそう)皇帝は音楽を愛好して、宮廷の楽人の子弟300人を梨園に集めて自ら教えた。これを梨園の弟子(ていし)という。宮廷内の梨(なし)を植えた庭に教楽府が置かれたのは714年(開元2)ごろのことであるが、後世演劇の始祖神に祀(まつ)られる玄宗にちなむこの「梨園」ということばは、やがて劇壇全体を称するものとなる。わが国にも伝わって江戸時代には主として歌舞伎(かぶき)界をいう雅称となり、昭和の初期までよく用いられていた。

[傳田 章]

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普及版 字通 「梨園」の読み・字形・画数・意味

【梨園】りえん(ゑん)

演劇の人。唐・白居易〔長恨歌〕詩 梨園の弟子、白髮新たに 椒(せうばう)の阿監、娥老ゆ

字通「梨」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「梨園」の意味・わかりやすい解説

梨園
りえん
li-yuan; li-yüan

中国,唐の玄宗が始めた音楽施設の一つ。太常寺太楽署のすぐれた男子楽人 (官有奴隷) や教坊 (宮廷直属の妓女の司) の名妓をえりすぐって,長安の都の北西郊の梨苑に集めて芸術音楽を教習させ,玄宗みずから教えたので,「皇帝梨園弟子」といわれた。のちに京劇の世界を呼ぶ雅称となり,それが日本に移されて歌舞伎界をさしていうようになった。

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とっさの日本語便利帳 「梨園」の解説

梨園

歌舞伎役者の世界の別称。主に幹部級を指す。中国・唐の玄宗が梨の庭園で音曲を教えた故事から。

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