教坊(読み)キョウボウ(英語表記)jiào fāng

デジタル大辞泉 「教坊」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ぼう〔ケウバウ〕【教坊】

劇場遊里など、遊芸を見せる所。
音曲に巧にして且つ容貌の美なるを以て盛名―に冠たり」〈織田訳・花柳春話
中国代以降、官設の歌舞音楽の教習所

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精選版 日本国語大辞典 「教坊」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ぼうケウバウ【教坊】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 昔、中国で宮中の音楽を管理し、特定身分をもつ楽人や舞妓を養成した役所。日本では奈良平安時代に宮中に内教坊があった。
    1. [初出の実例]「教坊の設また唐の制にならふて四部に分つ」(出典:制度通(1724)一一)
    2. [その他の文献]〔白居易‐琵琶行〕
  3. 遊芸を見せる所。劇場や遊里。
    1. [初出の実例]「昇平情態尚繊巧、教坊新譜日換遷」(出典:寛斎先生遺稿(1821)一・三絃弾)
    2. 「音曲に巧にして且つ容貌の美なるを以て盛名教坊(ケウバウ)に冠たり」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二二)

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改訂新版 世界大百科事典 「教坊」の意味・わかりやすい解説

教坊 (きょうぼう)
jiào fāng

中国の宮廷楽舞および演芸の教習の場をいう。隋の煬帝(ようだい)のとき(610)長安に南北楽人300人を坊に集めたのが先鞭で,唐初の武徳年間(618-626)まず内教坊が創設され雅楽を教習した。音楽を愛した玄宗の714年(開元2)になると内教坊のほかに左右教坊を長安と洛陽に各2ヵ所設置し,それまで管轄していた礼楽の役所太常寺から分離して宮廷直属とした。六朝時代より盛んになった西域,インド系の胡楽と中国俗楽,それに民間の演芸を教習し,雅楽をこととしなかったためである。同年,玄宗はさらに梨園を設立しており,ここに唐朝音楽文化は最高潮に達した。その組織は,長官の使,直接楽人を管理する都知,教習を担当する博士と男女約3000人の楽人よりなる。唐朝教坊には,太常寺より転属してきた男性楽人がおもに器楽にたずさわり,小劇や演芸曲芸をするものもいたが,重要なのは歌舞を演じる官奴の女性楽人であった。唐,崔令欽(さいれいきん)の《教坊記》は4種類に分けられている。色芸最もすぐれた内人(前頭人),琵琶など弦楽器を本来専業とする良民出身の搊弾家(しゆうだんか),それに宮人と雑婦女(見習い)である。玄宗以後,教坊の機能は徐々に低下して,819年(元和14)1ヵ所に統合された。五代をへて宋朝になると,太祖は唐制にならって960年(建隆1)再び設置した。宋では楽曲の種類により,法曲,亀茲(きじ),鼓笛,雲韶(うんしよう)の4部に分け部頭をおいたり,各楽人の担当によって,篳篥(ひちりき),笙,雑劇など13の色科を立て色長に監督させた。宋朝教坊は,男性楽人が中心となって,器楽演奏,歌舞劇の発展がみられ新作も盛んに行われた。ただし員数は大幅に減少し(北宋初め176人)また不定で,民間楽人を当てることが多かった。遼・金両朝とも教坊をもち,元・明・清三朝は礼部に教坊司がおかれて,雅俗ともに教習したが,1729年(雍正7)に和楽署と改め廃名した。日本では平安時代に女子の音楽教習の機関を内教坊といった。
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普及版 字通 「教坊」の読み・字形・画数・意味

【教坊】きようぼう(けうばう)

唐以後、都に設けた音楽歌舞の教習所。〔唐書、百官志三〕開元二年、坊を宮側に置く。~京に左右坊を置き、俳優雜劇を掌らしむ。是れより太常に隷せず、中官を以てと爲す。

字通「教」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「教坊」の意味・わかりやすい解説

教坊
きょうぼう

中国および日本の宮中の音楽教習機関。漢代 (前2世紀) 以来,中国宮廷国家の音楽は,礼楽の府である太常寺で管轄したが,南北朝 (6世紀) から西方音楽が入り,芸術音楽が盛んになり,太常寺以外に教習機関が設けられた。唐初 (7世紀) に宮女の楽舞を教える内教坊がおかれ,玄宗の開元2 (714) 年に長安の都の宮城の東隣に左教坊,右教坊がつくられた。唐末には縮小されて仗内教坊になったが,最盛時には数千人の妓女が,内人,宮人,しゅう弾家,雑婦女の階級に分れて養われた。実質は奴隷に等しい身分であった。教坊の名は宋,元,明と伝わり,清初 (17世紀) に消失した。日本では奈良朝に女踏歌 (とうか) を教えるところとして宮中におかれ,平安朝末まで続いた。

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