中国,唐王朝(618-907)の正史で旧・新の2種がある。《旧唐書(くとうじよ)》は200巻で,後晋の劉昫(りゆうく)らの奉勅撰。本紀20巻,志30巻,列伝150巻から成る。《新唐書》は225巻で,宋の欧陽修らの奉勅撰。本紀10巻,志50巻,表15巻は欧陽修が,列伝150巻は宋祁(そうき)(998-1061)が撰述した。《旧唐書》は,編纂の当時,唐初から武宗朝以前については実録も残っていて,それらの材料を手を加えずに忠実に伝えているので,史料としては貴重なことが多いが,宣宗朝以後の部分は,唐末の混乱期に根本史料が失われたので,史料不足による不備がめだつ。宋代になって,唐代の記録や資料が多く現れたので《旧唐書》を補正しようとする気運がおこり《新唐書》が編纂された。この書は,主編者の宋祁と欧陽修がともに韓愈(かんゆ)の学風を慕い,もとの史料をすべて古文に書き改め,ときには文意を損なう場合もあるが,一家の見識を示していて,〈表〉や〈志〉の部分に価値が高いこととあいまって,唐代社会の究明に当たっては,やはり基本史料である。
執筆者:礪波 護
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、唐代に関する正史。『旧(く)唐書』『新唐書』の2種類がある。『旧唐書』200巻は五代後晋(こうしん)の劉昫(りゅうく)らの撰(せん)、945年成立。唐滅亡直後の史料不足により後半部が不備であり、前半部も先行諸史料の摘録からなっていて、体裁に一貫性はない。しかしそのために、唐代の原史料の文がほぼそのまま残されている部分も多く、史料的価値は高い。『新唐書』225巻は北宋(ほくそう)の欧陽修(おうようしゅう)らの撰、1060年成立。宋代になって入手可能となった史料を多く用い、『旧唐書』の欠を補うところも多い。表の多いのも特徴で、とくに宰相世系表は有用であり、兵志、選挙志を設けたのも本書が最初である。文章は当時重んじられた古文を用い、その簡潔な記述は正史編纂(へんさん)に一紀元を画したものといわれ、以後長く尊重された。しかし、原史料の文体まで改められ、簡略にすぎて文意不明瞭(ふめいりょう)なところも生じ、史料的価値は『旧唐書』に劣る。このように、両書ともに一長一短がある。なお、両書を比較したものに清(しん)の沈炳震(しんへいしん)『新旧唐書合鈔(ごうしょう)』、清の趙紹祖(ちょうしょうそ)『新旧唐書互証』などがある。
[金子修一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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