βブロッカー製剤(読み)ベータブロッカーセイザイニグン

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「βブロッカー製剤」の解説

βブロッカー製剤(Ⅱ群)

製品名
《アセブトロール塩酸塩製剤》
アセタノール(サノフィ)
《アテノロール製剤》
アテノロール(コーアイセイ、沢井製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、武田テバファーマ、鶴原製薬、長生堂製薬、東和薬品、日新製薬、日医工ファーマ、日医工、日本ジェネリック、ニプロ、ファイザー、マイラン製薬)
アルセノール(サンド、原沢製薬工業、ポーラファルマ)
アルマイラー(武田テバ薬品、武田テバファーマ、武田薬品工業)
クシセミン(辰巳化学)
テノーミン(アストラゼネカ)
《カルテオロール塩酸塩製剤》
カルテオロール塩酸塩(沢井製薬、辰巳化学、鶴原製薬、日医工)
小児用ミケラン(大塚製薬)
チオグール(東和薬品)
ミケラン(大塚製薬)
《ナドロール製剤》
ナディック(大日本住友製薬)
《ビソプロロールフマル酸塩製剤》
ウェルビー(サンド、日本ジェネリック)
ビソプロロールフマル酸塩(沢井製薬、全星薬品工業、全星薬品、武田テバファーマ、武田薬品工業、東和薬品、日医工、日新製薬、日本ジェネリック)
メインテート(田辺三菱製薬
《ピンドロール製剤》
カルビスケン(アルフレッサファーマ)
ピンドロール(鶴原製薬、東和薬品、日医工)
《ブフェトロール塩酸塩製剤》
《プロプラノロール塩酸塩製剤》
インデラル(アストラゼネカ)
プロプラノロール塩酸塩(沢井製薬、鶴原製薬、東和薬品、日医工)
《ベタキソロール塩酸塩製剤》
《メトプロロール酒石酸塩製剤》
セロケン(アストラゼネカ)
メトプロロール酒石酸塩(沢井製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、辰巳化学、長生堂製薬、東和薬品、日本ジェネリック、陽進堂)
ロプレソール(サンファーマ、田辺三菱製薬)

 心臓の拍動を活発にしたり、血圧を上昇させる交感神経βベータ作用を抑えるはたらきがある薬です。抗不整脈剤のクラスⅡ群に分類されます。


 心臓に選択的に作用するものを「心臓選択性」薬といい、気管支や代謝などへの影響が少なく、呼吸器疾患や糖尿病合併症がある人や高齢者に適した薬です。


 βブロッカー製剤自体は交感神経を抑制する薬ですが、なかには「軽度に交感神経を刺激する」薬があります。心臓のポンプ機能の抑制が低下して安静時の心拍数が少ない場合や、閉塞性へいそくせい肺疾患の人、高齢者などに適しています。


 一方、「交感神経刺激作用のない」薬は、抗狭心効果が強力で、労作性狭心症や不整脈が合併している場合に適しています。


 また、β遮断作用のほかにαアルファ遮断作用を加えることで、血管を拡張し、末梢循環への悪影響が少なくなっている薬もあります。


 期外収縮きがいしゅうしゅく急性心筋梗塞しんきんこうそくにおける心室性不整脈の予防、心房細動しんぼうさいどう発作性頻脈の治療と予防、発作性心房細動の予防、手術や麻酔に伴う不整脈の予防に用いられるほか、本態性高血圧症の治療、狭心症本態性振戦などの予防と治療に使用されます。


 プロプラノロール塩酸塩製剤は、βブロッカー製剤の代表的な薬で、交感神経の興奮を抑えて心拍数を減少させ、脈の乱れをもとに戻す効果があります。不整脈のほかに、狭心症や高血圧症の治療、片頭痛発作の発症抑制にも効果があり、循環器の病気の治療に広く利用されています。ただし交感神経全体に作用して気管支を収縮させたり、心臓のポンプ機能を抑制するので、気管支喘息ぜんそくや心不全といった病気のある人は使用を避けるか、使用する場合は医師の指示をより厳重に守る必要があります。


 ピンドロール製剤は、プロプラノロール塩酸塩製剤と同じ程度の効果をもつ薬です。心臓の収縮力を抑える作用が緩和なので、血圧を下げる作用も弱く、その分、副作用が少ない薬です。


 カルテオロール塩酸塩製剤は、代表的な不整脈治療剤であるプロプラノロール塩酸塩製剤と作用・効果の程度は同じですが、効果が長時間持続する点が特長です。神経や心臓への作用が弱く、不眠、抑うつ(ふさぎ込みがちになる)、血圧低下徐脈(脈が遅くなる)といった副作用が現れにくい薬です。


 アテノロール製剤は、心臓に選択的に作用する(心臓だけに作用し、ほかの器官には作用しない)薬で、気管支を収縮させる作用や末梢血管を拡張させる作用が弱いので、副作用も緩和です。1日1回の服用で、効果が長時間(24時間)持続します。


①この薬に対してアレルギーのある人は、過敏症状(発疹ほっしんかゆみなどのアレルギー症状)をおこすことがあります。


 過敏症状がおこったら使用を止め、すぐ医師に相談してください。


②服用している薬によって差がありますが、心不全、房室ブロックなどの循環器障害が現れることがあります。


 そのほか、アセブトロール塩酸塩製剤では、全身性エリテマトーデス様症状、間質性肺炎が、アテノロール製剤では、徐脈、洞房ブロック、心胸比増大、失神を伴う起立性低血圧、血小板減少症、紫斑病、気管支けいれん、呼吸困難、喘鳴が、カルテオロール塩酸塩製剤は、洞房ブロック、洞不全症候群徐脈性不整脈、うっ血性心不全、冠攣縮性狭心症、失神が、ビソプロロールフマル酸塩製剤では、高度徐脈、洞不全症候群が、ピンドロール製剤は、心胸比増大、喘息ぜんそく症状が、プロプラノロール塩酸塩製剤は、うっ血性心不全、徐脈、末梢性虚血、失神を伴う起立性低血圧、呼吸困難、気管支けいれん、喘鳴、血小板減少症、無顆粒球症、紫斑病が、メトプロロール酒石酸塩製剤では、心原性ショック、うっ血性心不全、徐脈、洞機能不全、喘息症状の誘発・悪化、肝機能障害、黄疸が現れることがあります。


 このような症状が現れたら服用を止め、すぐ医師に相談してください。


③涙液が減少することがあります。また、頭痛、めまい、不眠、胃腸障害(吐き気嘔吐おうと、食欲不振など)のほか、ねむけ、うつ状態(ふさぎ込みがちになる)、のどの渇き、口内炎、ほてり、頻尿、疲れ、だるさ、手足のしびれ、気管支のけいれん、脱毛、立ちくらみ、目のかすみ、血糖値の低下、高血糖、総コレステロール値の上昇などがおこることがあります。このような症状がおこったら、必ず医師に相談してください。


④自分で気がつきにくい副作用もあるので、医師から指示された診察や検査は必ず受けるようにしてください。


①錠剤、カプセル剤、散剤などがあります。ふつうは食後に服用します。また、十分な水で飲んでください。


 かってな判断で中止したり使用量を減らしたりせず、指示通り正しく服用することが大切です。急に薬の服用をやめると頻脈をおこしたり狭心症が悪化することがあります。


 症状が軽くなったからといって、かってな判断で減量したり中止したりせず、医師の指示通り服用することが大切です。


②不整脈以外に病気のある人は、必ず医師に報告しておいてください。


 とくに気管支喘息、気管支けいれん、糖尿病性アシドーシス、代謝性ケトアシドーシス、徐脈、房室ブロック、洞房ブロック、肺高血圧症による右心不全、うっ血性心不全、低血圧症、重い末梢循環障害、未治療の褐色細胞腫などの病気がある場合は、あらかじめ医師に報告してください。この薬を使用できないことがあります。


 また、特発性低血糖症、糖尿病、甲状腺こうじょうせん中毒症といった病気や、肝臓や腎臓じんぞうの機能障害などのある人、心不全をおこすおそれのある人は、あらかじめ医師に報告し、使用することになった場合にも医師の指示をより厳重に守ってください。


③以前にこの薬を使って過敏症状をおこしたことのある人、両親やきょうだいにアレルギーのある人は、あらかじめその旨を医師に報告してください。この薬を使用できないことがあります。


④妊婦あるいは現在妊娠する可能性のある人は、必ず医師に報告してください。胎児にとっての安全性はまだよくわかっていないので、この薬を使えないことがあります。


⑤この薬を使用中は、成分が乳中に移行することもあるといわれています。


 母乳で授乳中の人には、人工栄養に替えるといった指示が出されることもあります。また、服用するときも、医師の指示をより厳重に守ってください。


⑥高齢者がこの薬を使用するときは、医師の指示をより厳重に守ってください。


⑦この薬を使用中は、副作用出現のチェックや、薬の効果の判定のための定期的な検査・診断が指示されるはずです。指示された検査は、必ず受けてください。


 とくに脈拍の測定、血圧の測定、心電図検査、心機能・肝機能・腎機能検査を受けながら使用することが大切です。


⑧めまい、ふらつき、ねむけなどの副作用をおこすことがあるので、自動車の運転や高所での作業、複雑な機械操作を伴う仕事などにたずさわる人は、医師に相談してください。とくにカルテオロール塩酸塩製剤では、自動車の運転や高所での作業は避けてください。


⑨長期間使用し続けなければならない薬です。外来で薬をもらっている場合には、週末、休暇前、旅行前などは薬が十分にあるかどうか確かめ、不足するようなら処方してもらいましょう。


⑩薬を使用中に、目が乾いたり、口・のどが渇くことがあります。点眼液やガムなどを用いると治まることがあります。医師に相談してください。


⑫現在使用している薬があったり、ほかの薬を使う必要があるときは、必ず医師に相談してください。


 薬によってちがいはありますが、以下の薬との併用は注意してください。


 ほかの交感神経遮断剤〔降圧剤など〕や、ほかの不整脈治療剤と併用すると、副作用がおこりやすくなります。


 カルシウム拮抗剤と併用すると、両方の薬の作用が強くなります。


 降圧剤のレセルピン製剤と併用すると、急激な血圧低下がおこりやすくなります。


 血糖降下剤と併用すると、低血糖をおこしやすくなります。糖尿病の合併症を治療するためにβブロッカーを使用しなければならない人は、低血糖をおこしたときの対応を医師から聞いて、しっかり身につけておきましょう。


 強心剤のジギタリス製剤と併用すると、房室伝導時間の延長がおこることがあります。


 向精神剤と併用すると、めまい、不整脈が、チオリダジン製剤と併用するとQT延長がおこりやすくなります。


 とくにプロプラノロール塩酸塩製剤は、リザトリプタン安息香酸塩製剤との併用はできません。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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