改訂新版 世界大百科事典 「アカエビ」の意味・わかりやすい解説
アカエビ
Metapenaeopsis barbata
体長12cmに達する甲殻綱クルマエビ科のエビ。甲は厚く,不規則なくぼみがあり,粗毛が密生している。額角はまっすぐで,上縁に6~7本のとげがある。頭胸甲にはとげがあり,後側縁に沿って18~25の小隆起が並んだ発音器がある。産卵の盛期は7~8月で,9月には稚エビが多量に見られるようになる。11月ごろまで成長し,越冬後6月から7月にかけて急に成長して産卵する。産卵後は死ぬため寿命は1年であるが,生殖期の初期に産卵されたものの中には年内に成熟して産卵,死滅する短期世代のものもある。房総半島から九州,南シナ海,インドネシア海域,オーストラリア東岸にかけて分布し,水深5~30mにすむ。小型で,その上甲が硬いので食用としては高級品ではないが,多量に漁獲されるため,むきエビなどとして利用される。日本では伊勢湾,瀬戸内海,八代海などが有名な産地である。ごく近縁のトラエビM.acclivisもアカエビと混獲されるが,体色や生殖器の形態が異なる。トラエビの斑紋のほうが赤く,実際の体色と和名がむしろ逆になっている。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報