アカヒメジ(読み)あかひめじ(その他表記)yellowfin goatfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカヒメジ」の意味・わかりやすい解説

アカヒメジ
あかひめじ / 赤非売知
yellowfin goatfish
[学] Mulloidichthys vanicolensis

硬骨魚綱スズキ目ヒメジ科に属する海水魚。日本海側では山口県沿岸、太平洋側では房総(ぼうそう)半島から九州南岸の太平洋岸、屋久島(やくしま)、南西諸島、台湾、オーストラリア東岸、紅海、東アフリカなど西太平洋、インド洋に広く分布する。体は細長く、側扁(そくへん)する。体高は背びれの起部付近でもっとも高く、体長のおよそ28~29%。頭の外郭は比較的緩く一様に曲がる。頭長は体長の26~27%。吻(ふん)は短く、頭長は吻長の2.0~2.5倍。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁に達しない。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に歯がない。下顎の前端付近に1対(つい)の細長いひげがあり、前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁下に達する。頭長はひげの長さの1.2~1.5倍。鰓耙(さいは)は上枝に7~10本、下枝に21~26本。鱗(うろこ)は小さく、側線鱗(りん)数は33~36枚。背びれはよく離れた2基で、7~8棘(きょく)9軟条、第1棘はきわめて短い。臀(しり)びれは7~8軟条。尾びれの後縁は深く二叉(にさ)する。体色は瞬時に変えることができるが、普通、背側面では橙(だいだい)色で、腹側面では銀桃色あるいは一様に赤色であり、目の後縁から尾びれ基底まで体の中軸を水平に1本の黄色帯が走る。前鰓蓋骨と主鰓蓋骨の縁辺は黄色みを帯びる。胸びれを除くすべてのひれは黄色。ひげは白い。普通、浅海礁湖サンゴ礁、湾などに見られるが、水深113メートル以浅のサンゴ礁外縁にいることもある。日中はサンゴ礁上で群れているが、夜間にばらばらになって砂上で小さいカニ類、エビ類などの甲殻類、多毛類、軟体類などの小形底生動物を食べる。夜間には体色が白っぽくなり、黄色の縦帯は赤くなり、破線状になる。群れでいるときに体色を黄色に変えて、青色線を出現させる。これはヨスジフエダイに擬態して、いっしょに群れをつくるためと考えられている。最大体長は38センチメートルほどになる。定置網などで漁獲されるが、まとまってとれることはない。塩焼き、オイル焼き、フライなどにする。

 本種はリュウキュウアカヒメジM. pfluegeriに似るが、後種には黄色の水平線がなく、目が小さくて、眼後長(目の後縁から鰓孔までの長さ)は眼径の2倍以上あることなどでアカヒメジと区別できる。

[尼岡邦夫 2021年8月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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