改訂新版 世界大百科事典 「アジャータシャトル」の意味・わかりやすい解説
アジャータシャトル
Ajātaśatru
古代インド,マガダ国の王。在位,前493ころ-前462年ころ。生没年不詳。漢訳仏典では阿闍世(あじやせ)とする。父はブッダの庇護者として名高いビンビサーラ(頻婆娑羅)。仏教の伝説によると,野心家のアジャータシャトルはブッダのいとこで背教者のデーバダッタ(提婆達多(でーばだった))にそそのかされ,父王を幽閉死させて王位についたという。在位中に北西方の大国コーサラや,北方のブリジ国Vṛjiを征服し,マガダ国発展の基礎を築いた。パータリプトラ(後世にマガダ国の首都となる)の地にはじめて築城したのもこの王である。王は即位後もデーバダッタにくみしたが,のちに前非を悔いてブッダの信奉者となった。ブッダはこの王の在位第8年に死んだが,そのとき遺骨の一部を得て都のラージャグリハ(王舎城)に仏塔を建立したという。また同年ラージャグリハ郊外で開かれた第1回仏典結集を援助した。32年の統治ののち,王子のウダヤバドラに殺されたとも伝えられる。
執筆者:山崎 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報