アジャータシャトル(読み)あじゃーたしゃとる(英語表記)Ajātaśatru

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジャータシャトル」の意味・わかりやすい解説

アジャータシャトル
あじゃーたしゃとる
Ajātaśatru

生没年不詳。古代インド、ブッダ釈迦(しゃか))と同時代のマガダ国王(在位前491ころ~前459ころ)。漢訳仏典には阿闍世王(あじゃせおう)と記される。紀元前6世紀インド北東部のビハール南部平野で、しだいに強大となった王国の王子として生まれ、父王ビンビサーラを殺して王位につき、ラージャグリハ(漢訳名は王舎城。今日のラージギル)を都とした。ついで近隣の部族体制の諸国を併合し、北西の強国コーサラと覇権を争って破り、ガンジス川中流域の最強国となり、軍事組織と支配体制を整えて、インド古代統一国家形成の端緒を開いた。彼は仏教を信奉して保護し、その治世の間、新しい諸宗教が現れ、都市の商工業が栄えた。

[山崎利男 2016年11月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジャータシャトル」の意味・わかりやすい解説

アジャータシャトル
Ajātaśatru

仏教興起時における中インド,マガダ国の王 (在位前 491頃~前 459頃,異説もある) 。阿闍世 (あじゃせ) 王とも書く。父はビンビサーラ王,母はバイデヒー。伝説によると,父王に子供がなかったので占い師に問うと,1人の仙人が死後王の太子として再生すると答えたので,王は待ちきれずその仙人を捜して殺害した。かくして生まれたのがアジャータシャトル (未生怨) であるという。この太子は長じるに及び,ブッダにそむいたデーバダッタ (提婆達多) にそそのかされ,父王を獄中に幽閉して餓死させて王位についた。在位期間中,周辺の敵国を併合してマガダ国を一大強国としたが,父王に対する自分の行為を悔い,ついに仏教の帰依者となった。ブッダの入滅後,マハーカーシャパ (摩訶迦葉) が十葉窟で仏典の第1回結集をした際に必要な資材の一切を供与し,またジャイナ教にも種々の保護を与えた。

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