日本大百科全書(ニッポニカ) 「サリチル酸メチル」の意味・わかりやすい解説
サリチル酸メチル
さりちるさんめちる
methyl salicylate
サリチル酸の代表的なエステル。o(オルト)-ヒドロキシ安息香酸メチルともよばれる。天然には冬緑(とうりょく)油や白樺(しらかば)油の主成分として存在するほか、広く植物精油中に分布している。実験室的には工業的にもサリチル酸とメタノール(メチルアルコール)とを酸の存在下で反応させて合成する。特有の芳香をもつ無色の液体で、種々の有機溶媒と任意の割合で混じり合う。菓子、チューインガム、歯みがきなどの香料となるほか、消炎剤、神経痛の治療などに軟膏(なんこう)や塗布剤として用いられる。毒性があるので、大量の使用にあたっては注意が必要である。
[廣田 穰]