キササゲ(読み)きささげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キササゲ」の意味・わかりやすい解説

キササゲ
きささげ / 木豇豆

[学] Catalpa ovata G.Don

ノウゼンカズラ科(APG分類:ノウゼンカズラ科)の落葉高木。高さ6~9メートル。葉は広卵形または円形で先はとがり、対生するが輪生することもある。長い柄があり、浅く3~5裂し、基部は円形または心臓形で質は厚く、軟毛がある。6~7月に枝の先に多数の大形の花を円錐(えんすい)花序につける。花冠漏斗(ろうと)状で先は5裂して唇形となり、淡黄色暗紫色斑点(はんてん)がある。雄しべは5本で、うち3本は短く葯(やく)がない仮雄蕊(かゆうずい)である。10月ころ細長い蒴果(さくか)を下垂させ、長さ約30センチメートル、径3~4ミリメートル、中に多数の扁平(へんぺい)な種子がある。種子は両端に長さ1センチメートルの白毛を密生し、全長3センチメートル、幅3ミリメートルとなる。中国中部原産で、日本各地に栽培され、野生化もしている。中国では幹と根の皮部を梓白皮(しはくひ)と称して清熱、解毒薬として使用し、日本では未熟な果実をとり、乾燥したものを利尿薬として腎臓(じんぞう)炎、浮腫(ふしゅ)、脚気(かっけ)などに用いる。和名は、ササゲ(マメ科)のような果実をつける木という意味である。中国中部に分布するトウキササゲC. bungei C.A.Meyの中国名は楸で、同様に薬用にするが、材を版木に用いるのでよく知られている。北アメリカ東部原産のアメリカキササゲC. bignonioides Walter、ハナキササゲ(オオアメリカキササゲ)C. speciosa Warderは庭木街路樹にしている。

[長沢元夫 2021年10月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「キササゲ」の意味・わかりやすい解説

キササゲ
Chinese catalpa
Catalpa ovata G.Don

中国原産で薬用や観賞用に栽培されるノウゼンカズラ科の落葉高木。高さ6~9m,直径60cmくらいとなる。葉は対生し,広卵形またはやや円形,長さ10~25cm,先端は急に短くとがり,基部は心形,裏面にははじめ短毛がある。7月ころ頂生の円錐花序に多数の花をつけ,長さ10~25cm。花は鐘形で淡黄色,暗紫色の斑点があり,長さ約2cm。蒴果(さくか)は線形で長さ20~30cm,直径4~7mm,幼時は長柔毛を有する。種子は長楕円形,長さ8~10mmで両端に長毛がある。日本では暖地で古くから栽培され,しばしば河岸などで自生している。果実を利尿剤とし,材は軽いので下駄,器具,版木にする。昔は弓を作り,梓弓(あずさゆみ)と称した。若葉は食用になる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キササゲ」の意味・わかりやすい解説

キササゲ
Catalpa ovata

ノウゼンカズラ科の落葉高木。中国原産で古くから日本に渡来し,庭などに植えられている。高さ 10m内外,葉は対生し広卵形または円形で,しばしば浅く3裂し,キリの葉に似ている。夏,枝先に大きな総状花序を出し,白色または淡黄色のキリに似た花をつける。 10月頃,長さ 20cm以上のササゲに似た線状の細長い 蒴果をつける。キササゲという名は,果実がササゲに似ている樹木であることによる。果実は乾かして腎臓病の薬 (利尿剤) にする。北アメリカ産の近縁種アメリカキササゲは街路樹などとして植えられる。

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百科事典マイペディア 「キササゲ」の意味・わかりやすい解説

キササゲ

中国原産のノウゼンカズラ科の落葉高木。葉は長い柄があって対生し,広卵形で先はとがる。夏,枝先に淡黄色の花を多数,円錐状につける。花冠は漏斗(ろうと)状で先が5裂し,長さ2〜3cm。10月ごろ,ササゲに似た細長い果実が成熟し,多数枝先からたれ下がる。樹を庭木とし,果実を利尿剤とする。
→関連項目アズサ(梓)

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世界大百科事典(旧版)内のキササゲの言及

【アズサ(梓)】より

…い,いる,ひく,はる,もと,すえ,つる,よる,かえる,や,音などにかかる枕詞として歌に詠まれた梓弓の梓にあたる植物には,古来キササゲ,アカメガシワ,オノオレ,リンボク(ヒイラギガシ)などの諸説があり一定しなかった。ところが白井光太郎がカバノキ科のヨグソミネバリ(ミズメ)説を唱え,正倉院の梓弓についての顕微鏡的調査の結果からも実証され,現在これが定説になっている。…

※「キササゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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