日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセト酢酸エチル」の意味・わかりやすい解説
アセト酢酸エチル
あせとさくさんえちる
ethyl acetoacetate
酢酸エチルに金属ナトリウムを反応させると得られるが、工業的にはジケテンとエタノールとを酸または塩基触媒の存在下で反応させて製造する。果実に似た芳香をもつ無色の液体で、種々の有機溶媒と任意の割合で混ざり合う。新しく蒸留したものはケト形92.3%、エノール形7.7%の平衡混合物であり、エノール形を含むために塩化鉄(Ⅲ)の水溶液を加えると紫色を呈する。
薄い酸または薄いアルカリで加水分解するとアセトンになるが、強いアルカリと処理すると酢酸ナトリウムになる。アゾ染料、解熱剤のアンチピリン、抗マラリア剤、香料、合成除虫菊剤などの合成原料になるほか、ラッカーなどの塗料溶剤、分析試薬にも用いられる。
[廣田 穰]
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