アナツバメ(読み)あなつばめ(英語表記)cave swiftlet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナツバメ」の意味・わかりやすい解説

アナツバメ
あなつばめ / 穴燕
cave swiftlet

鳥綱アマツバメ目アマツバメ科アナツバメ属の鳥の総称。この属Collocaliaは小形のアマツバメよりなり、その巣は中華料理の高級なスープの材料となる。約16種があり、インドからオーストラリアまで分布する。全長9~17センチメートル。背面は一般に灰黒色ないし黒褐色で、下面も黒褐色のものが多い。洞穴の壁に群集して巣をつくり、サラワクニアにあるグレート・ケイブGreat Caveには200万個の巣があるといわれている。ある種のアナツバメは、洞穴内での飛翔(ひしょう)に反響定位を用いる。ただし、アナツバメの出す音波は超音波ではなく、人間の可聴範囲である1.5~5.5キロヘルツと報告されている。スープ用の燕巣(えんそう)(燕窩(えんか)〈イエンウオ〉)は、ほとんど唾液(だえき)だけを固めたものが上等で、羽毛や植物片の多いものは下級品である。燕窩として採集されるのは、アナツバメ類のなかでも主としてマレーアナツバメC. fuciphagaとハシブトアナツバメC. maximaの巣で、主産地はサバ、サラワク、フィリピンなどである。

[森岡弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナツバメ」の意味・わかりやすい解説

アナツバメ
swiftlets

アマツバメ目アマツバメ科のヒマラヤアナツバメ属 Aerodramus,アナツバメ属 Collocalia などの鳥の総称。全長 9~17cm。およそ 30種からなる。黒褐色の羽色の種が多い。アマツバメ同様,空中を飛び回って昆虫類をとる。多くは山地海岸天井の高い洞窟内に集団繁殖し,天井や壁面に巣をつくる。巣は唾液と空中に浮遊している鳥の羽毛や軽い植物片を混ぜ合わせたもので,種によってはほぼ唾液だけでつくるものもある。この巣は中国料理の「燕窩」(ツバメの巣のスープ)に使われており,また東南アジアの一部の地方では媚薬としても用いられている。東南アジアや南太平洋の島々,オーストラリア北東部などに分布する。

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