日本大百科全書(ニッポニカ) 「アヘイル石」の意味・わかりやすい解説
アヘイル石
あへいるせき
aheylite
トルコ石系鉱物の一つ。1998年フォードEugene Edward Foord(1946―1998)およびタッガートJoseph E. Taggart, Jr.によって、ボリビアのウアヌニHuanuni地域ミラ・フローレスMira Flores錫(すず)鉱山の鉱脈型鉱床から発見された新鉱物。トルコ石中のCu2+(二価銅)のFe2+(二価鉄)置換体に相当する。原記載のものはきわめて亜鉛(Zn)に富み、Fe:Zn=54:46である。柱状結晶からなる放射状組織をもつ微細球状物質をなし、これが層状の集合を形成する。
熱水鉱脈鉱床の脈石鉱物として産し、原産地での共存鉱物は、閃(せん)亜鉛鉱、黄鉄鉱、錫石、バリシア石、藍(らん)鉄鉱、銀星石、石英など。日本では静岡県河津(かわづ)鉱山(閉山)の熱水鉱脈型金・銀鉱床の脈石鉱物として、石英脈中にその亜鉛置換体ファウスト石faustite(化学式ZnAl6[(OH)2|PO4]4・4H2O)とともに産する。
同定はわずかに着色した青色。薄い皮膜状のものをはがすと、小さい破片となり、これを白い紙の上で白色光の下で観察すると着色していることがわかるが、プラネル石planerite(Al6[(OH)4|PO4|PO3OH]2・4H2O、または□Al6[(OH)4|PO4|PO3OH]2・4H2O)とは区別しがたい。アメリカ地質調査所所属の鉱床学者アレン・V・ヘイルAllen V. Heyl(1918―2008)にちなんで命名された。
[加藤 昭 2015年12月14日]