翻訳|alizarin
1,2-ジヒドロキシアントラキノンをいう。天然染料茜(あかね)の主成分で,1868年にK.グレーベ,K.T.リーバーマン,W.H.パーキンによって初めて人工的に合成された。かつては藍とともに重要な位置を占めていたが,現在ではほとんど使用されず,媒染系有機顔料としてマダーレーキ,およびアリザリンスルホン酸ナトリウムがpH指示薬,キレート滴定指示薬,吸着指示薬として少量使用されている。1,2位に2個のヒドロキシル基をもつため金属と錯塩をつくる性質を利用した,セルロース系繊維,羊毛などに染着する媒染染料である。金属の種類により発色が異なり,アルミニウムで赤,カルシウムで橙,クロムで橙赤,鉄では紫となる。アルミニウムとカルシウムを併用した錯塩染料はトルコ赤と称して歴史的に著名である。アリザリン系染料はまた,アルミニウム酸化皮膜用染料としてアルミニウムの陽極酸化皮膜の染色に用いられる。アントラキノン-2-スルホン酸のアルカリ融解で合成される。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
布を堅牢(けんろう)で美しいトルコ赤に染めることのできる、アカネの根から得られる色素の主成分。世界最古の天然染料の一つである。日本でも洋茜(ようあかね)として用いられてきたが、今日では他の合成染料によって置き換えられている。化学構造は1,2-ジヒドロキシアントラキノンで、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムを空気下で水酸化ナトリウムと溶融して合成される。絵の具のマダーmadderは、アリザリンのアルミニウム錯塩(キレート)である。
ドイツのH・カロ、K・グレーベ、K・T・リーベルマン、イギリスのW・H・パーキンらによるアリザリンの化学合成(1868)は、広大な領域となったアントラキノン合成化学の端緒となった。
[飛田満彦]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
1,2-dihydroxyanthraquinone.C14H8O4(240.22).C.I.58000,C.I.Mordant Red 11ともいう.アカネの根に配糖体として含まれている.アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムの酸化により,最初に合成された天然色素.橙黄色の板状または針状晶.融点290 ℃,沸点430 ℃.水に難溶,熱メタノール,エーテルに易溶,有機溶媒に可溶.アルカリ性で紫色,濃硫酸で赤褐色を呈する.硝酸酸化でフタル酸を,亜鉛末還元でアントラセンを生成する.媒染剤により種々の色に染色される.[CAS 72-48-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…変異に富む種で,日本から東南アジア,ヒマラヤにかけて広く分布する。ヨーロッパ産のセイヨウアカネ(ムツバアカネ)R.tinctorum L.(英名common madder)は葉が6枚輪生し,根はアリザリンalizarinを含み,アカネと同じように,染色に用いられた。【福岡 誠行】
[染色]
アカネの根に含まれる赤色色素を熱水で抽出して得る染色(そめいろ)を茜という。…
…変異に富む種で,日本から東南アジア,ヒマラヤにかけて広く分布する。ヨーロッパ産のセイヨウアカネ(ムツバアカネ)R.tinctorum L.(英名common madder)は葉が6枚輪生し,根はアリザリンalizarinを含み,アカネと同じように,染色に用いられた。【福岡 誠行】
[染色]
アカネの根に含まれる赤色色素を熱水で抽出して得る染色(そめいろ)を茜という。…
…ドイツの化学者。染料アリザリン合成の成功により,天然染料から合成染料時代への橋わたしをした。フランクフルト・アム・マインに生まれる。…
…花は先端が5裂し直径5mmほど,おしべは5本である。根には配糖体の赤色色素アリザリンalizarinが存在する。深紅色で光沢があり,古来重要な染料であった。…
※「アリザリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加