アレクサンドリア学派(読み)アレクサンドリアがくは

改訂新版 世界大百科事典 「アレクサンドリア学派」の意味・わかりやすい解説

アレクサンドリア学派 (アレクサンドリアがくは)

(1)前3世紀から前2世紀前半にかけての,エジプトアレクサンドリアの図書館を中心とする文献学上の学統エフェソスゼノドトスロドスアポロニオス,サモトラケのアリスタルコスらにより,主としてホメロスの作品の校訂編纂や古典諸文献の収集を行った。(2)180年ころ,パンタイノスによりアレクサンドリアに設立された一種の私塾(アレクサンドリア教校)に形成された学派。この教校はアレクサンドリアのクレメンスオリゲネスへと継承され,新入信者へのキリスト教教理の問答による教授が行われた。その学風は聖書を比喩的に解釈し,〈旧約〉を〈新約〉の予型とみなすところに特色があり,聖書の文献学的研究を重視するアンティオキア学派に対する。(3)5世紀からアレクサンドリアがアラブに征服されるまで,同市を中心とするヘルメイアス,その子アンモニオスオリュンピオドロスステファヌスへと継承されていく新プラトン主義系譜アテナイを中心とする流れに比して形而上学的色彩が希薄であり,アリストテレスの注解を活発に行った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレクサンドリア学派」の意味・わかりやすい解説

アレクサンドリア学派
あれくさんどりあがくは

古代の大都市アレクサンドリアを中心とするキリスト教神学の一派。3~5世紀に栄えた。前半の3世紀には、その創始者クレメンスや、その弟子オリゲネスが著名である。最古の神学校といわれる「アレクサンドリア教校」も彼らによって創設された。その神学的特徴は、ヘレニズム的ユダヤ教や新プラトン主義を受容しながら、信仰理性調和、統合を目ざし、聖書解釈においては比喩(ひゆ)的解釈法が特色。後半の4~5世紀は、アタナシウス、アポリナリオス、キリロスなどに代表され、思想的基盤を同じくしながらも、前半が護教的、哲学的であるのに比べ、教権的、正統主義的特徴を有しており、時代の推移を示している。

[菊地栄三]

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百科事典マイペディア 「アレクサンドリア学派」の意味・わかりやすい解説

アレクサンドリア学派【アレクサンドリアがくは】

エジプト,アレクサンドリアに形成された学派。(1)前3世紀―前2世紀の文献学の学統。エフェソスのゼノドトス,ロドスのアポロニオス,サモトラケのアリスタルコスら,優れた人材を輩出した。(2)後180年ごろパンタイノスが創立したと伝えるキリスト教神学校。クレメンス,オリゲネスらが出て聖書の比喩的解釈を推進した。(3)5世紀から7世紀中葉までの新プラトン主義の系譜。ヘルメイアス,アンモニオス,オリュンピオドロス,ステファノスが知られる。
→関連項目オリゲネス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレクサンドリア学派」の意味・わかりやすい解説

アレクサンドリア学派
アレクサンドリアがくは
Alexandrian school

ギリシア人が前3世紀にアレクサンドリアに創設した文法の研究,教育の機関を中心として栄えた,文法・文献学の流派。ギリシア語の文法の記述で広く名をはせ,従来文献研究に従属していた文法学を独立した学問の位置にまで高めた。有名な学者には,前2世紀のアリスタルコスとディオニュシオス・トラクス,2世紀のアポロニオス・デュスコロスらがいる。

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