日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウティリヤ」の意味・わかりやすい解説
カウティリヤ
かうてぃりや
Kauilya
生没年不詳。古代インドの政治家。インドを初めて統一したマウリヤ王朝の創始者チャンドラグプタ(在位前316~前293ころ)の宰相として、帝国支配のために敏腕を振るったとされる。彼の思想は『カウティリヤ実利論』Kauilīya-Artha śāstraのなかに伝えられている。この書の内容は、政治、外交、軍事に関するものであるが、紀元後3世紀ごろにバラモン学者によって編集されたもので、そのすべてが彼の思想を示すものではない。その政治思想の中心は、武断政治による専制国家の建設であって、そのための手段として強力な軍隊組織、探偵、密告を動員する官僚支配、いっさいを政治に奉仕させる功利主義を強調した。
[山折哲雄]