アルテミドロス(英語表記)Artemidōros

改訂新版 世界大百科事典 「アルテミドロス」の意味・わかりやすい解説

アルテミドロス
Artemidōros

2世紀後半のギリシア著述家生没年不詳。小アジアエフェソス出身で,各種の占いを研究し《夢占い》全5巻を残した。簡潔な文体が特徴で,著述にあたっては文献の研究ばかりでなく,アジア,ギリシア,イタリアなど各地を旅して得た見聞を活用している。そのため当時の珍しい民間伝承や迷信の例が豊富に含まれているので,古代に関する民俗学的な研究には貴重な資料となっている。なお,同じエフェソス出身で同名の地理学者(前1世紀)がいるので注意。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルテミドロス」の意味・わかりやすい解説

アルテミドロス
あるてみどろす
Artemidōros

生没年不詳。古代ギリシアの学者。2世紀末ごろ各種の占いに関する著作散逸)のほか、現存の『夢占い』5巻を著した。これは、広く旅行して集めた資料に基づき夢の内容を合理的に解釈したもので、夢が現実となった多数の実例があげられている。彼は、夢占いからできる限り迷信や神秘的解釈を取り除き、さらに個人の習慣や考えを考察の対象に加えることにより、夢の一般的要素と個人的要素とを区別した。ストア哲学の影響が顕著である。

[岡 道男 2015年1月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルテミドロス」の意味・わかりやすい解説

アルテミドロス
Artemidōros

前2世紀末頃のギリシアの地理学者。エフェソスの出身。地中海沿岸,黒海沿岸を航海し,航海記や地理書を書いた。その著作はストラボンに利用され,また後代の著述家の引用や要約によっても知られている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアルテミドロスの言及

【占い】より

…既に,アリストテレスは,夢が神から送られてくるものではなく,人間の精神の機構と結びつくものとみなしているが,それでも,この夢見のための籠りは近世に至るまで一貫して世界の各地で行われ続けたのである。2世紀初頭に生まれたアルテミドロスは,ギリシア・ローマにおける夢占いの実際をもっとも詳細に記した人物であるが,その《夢判断》は,マクロビウスの《スキピオの夢》とともに,古代後期の夢占いの体系をよく伝えている。 木の枝または棒を用いる占いも起源は古い。…

※「アルテミドロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android