ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレクシエービッチ」の意味・わかりやすい解説
アレクシエービッチ
Alexievich, Svetlana
ベラルーシのジャーナリスト,小説家。細部まで練られた深みのある内省的作品をロシア語で紡ぎ出し,第2次世界大戦後から共産主義崩壊までのソビエト社会主義共和国連邦の社会的,政治的激動の時代を,妥協のない説得力ある筆致で描いた。ベラルーシの軍人の父とウクライナ人の母の間に生まれた。ベラルーシに移り,1967年から 1972年までミンスク大学でジャーナリズムを専攻,卒業後はポーランド国境近くのブレスト州ベレザで,その後はミンスクで新聞記者として働く。初期の作品は当局からは非愛国的で扇動的とみなされ,1980年代半ばにソ連の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフがペレストロイカ(改革)を実施するまで日の目を見なかった。1985年に発表した『戦争は女の顔をしていない』U voyny ne zhenskoe litsoは幅広い批評家の称賛をうけ,集団的アイデンティティの「口承歴史家」としての評価を確立させた。1997年,チェルノブイリ原子力発電所事故の破滅的結果を直視した『チェルノブイリの祈り』Chernobylskaya molitva: khronika budushchegoを発表。2013年には創作の領域をさらに広げ,ソ連崩壊後の共産主義の遺産を検証する『セカンドハンドの時代』Vremya sekond chendを発表した。2015年,作品が「多様な声からなる,私たちの時代における苦難と勇気の記念碑といえる」と評され,ノーベル文学賞(→ノーベル賞)が授与された。
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