アレマン(英語表記)Mateo Alemán

精選版 日本国語大辞典 「アレマン」の意味・読み・例文・類語

アレマン

  1. ( Mateo Alemán マテオ━ ) スペイン小説家小説悪漢グスマン=デ=アルファラーチェの生涯」で知られる。(一五四七‐一六一四頃

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改訂新版 世界大百科事典 「アレマン」の意味・わかりやすい解説

アレマン
Mateo Alemán
生没年:1547-1615ころ

スペインの小説家。サラマンカとアルカラで医学を学んだのち役人となったが,職権乱用負債のため2度にわたって入獄。1608年愛人と共にメキシコに渡り,そこで客死した。代表作は,17世紀のスペインで最もよく読まれた二部作《グスマン・デ・アルファラーチェGuzmán de Alfarache》(1599,1602)であるが,これはいわゆる〈悪者小説ピカレスク)〉の典型と目されるもので,ピカロ悪者)たるグスマンがスペインとイタリアを舞台に,狡知と悪徳の限りをつくして繰りひろげる冒険を自伝風に連ねたものである。作品の根底にある原罪意識と,主人公が最後に前非を悔いて真のキリスト教徒になるところから,これを当時の反宗教改革の理念の文学的表現とする解釈が,現在では最も有力である。この作品に始まる〈悪者小説〉の隆盛は,西ヨーロッパ諸国に大きな影響をおよぼし,各国にこのジャンルの傑作をもたらすことになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレマン」の意味・わかりやすい解説

アレマン
あれまん
Mateo Alemán
(1547―1614?)

スペインの小説家。医者の子としてセビーリャに生まれる。サラマンカとアルカラの大学で医学を学ぶ。役人として会計官などを勤めたこともあるが、しだいに無軌道な生活を送るようになり、借金詐欺の罪で一度ならず投獄されている。1608年に家族とともにメキシコに移住したが、1613年以降の消息は不明。

 代表作『グスマン・デ・アルファラーチェの生涯』(1599~1604)は、学業生活を放棄してならず者の生活に身を投じた主人公が、教訓を交えながら過去の罪深い生活を語ったもので、発表と同時に大好評を博し、各国語に翻訳され、17世紀を通して最大のベストセラーとなった。この小説は一般に、ピカレスク(悪漢)小説のジャンルを確立した作品とみなされているが、作者や、当時の読者の多くは、これを教訓的な物語と考えていたふしがある。

[桑名一博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレマン」の意味・わかりやすい解説

アレマン
Alemán, Mateo

[生]1547. セビリア近郊
[没]1614? メキシコ
スペインの作家。悪者小説の典型『グスマン・デ・アルファラチェ』 Guzmán de Alfarache (1599,1604) の作者。この作品が作者の生涯を知る有力な手掛りとなっている。監獄の外科医の子に生れ,セビリアの大学を出たあとサラマンカとアルカラの大学で医学を学んだ。フェリペ2世時代に徴税吏や競売の後見人をつとめたが,自堕落に流れ貧窮のうちに放浪生活が続いたようで,借金が返せずに投獄されたこともある。『グスマン』の第1部は5年間で5万部をこえるほどの大成功を収め,フランス語,英語,イタリア語などにも訳されて悪者小説の流行を促したほどだが,海賊出版が多くて貧乏の歯止めにはならず,まもなく再び投獄された。第2部はリスボンで 1604年に出版されたが,第3部が出版にいたらぬまま,08年,妻子を伴ってメキシコに渡り,この地で没した。

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百科事典マイペディア 「アレマン」の意味・わかりやすい解説

アレマン

スペインの作家。大学では医学を学んだが,途中で放棄して役人となり,下獄までする波乱の人生を送り,メキシコに渡ってそこで没した。代表作《グスマン・デ・アルファラーチェの生涯》(1599年―1602年)は《ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯》のあとを受けて,ヨーロッパにおけるピカレスク小説のジャンルを確立した作品として重要。この小説は空前のベストセラーとなり,ヨーロッパの各国語に翻訳されたが,反宗教改革のカトリックの教義を前面に押し出した教訓性の強いものである。
→関連項目悪者小説

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