食の医学館 の解説
あわきびひえきぬあ【アワ・キビ・ヒエ・キヌア】
《栄養と働き》
アワ、キビ、ヒエといった雑穀(ざっこく)は、旱魃(かんばつ)に強く、やせた土地でも栽培できるので、古くから救荒作物(きゅうこうさくもつ)として利用されてきました。
○栄養成分としての働き
いずれもたんぱく質が豊富で、リジン、トリプトファンは欠けていますが、小麦、米よりもたんぱく組成はすぐれています。体力を増強し、肝機能を増進させる作用があります。
〈アレルギー食品としても利用できるアルカリ性穀物〉
アワ、キビ、ヒエにはどれも微量成分のマグネシウム、亜鉛(あえん)、鉄が含まれ、貧血や味覚障害予防に効果的。
アワ、キビには無機質のケイ酸が含まれ、骨の形成、コレステロール減少を促進する働きがあります。
そのほか、豊富なビタミンB群が疲労回復、肝機能の強化に有効です。
また、米や小麦のアレルギーの人にも食べられます。
<アワ>
米よりもたんぱく質や脂肪を多く含み、昔から胃弱の人に適した穀物といわれています。また、鉄分が多いので、貧血や肌荒れぎみで悩む人には効果が期待できます。
<ヒエ>
ヒエは寒冷で湿潤な土地によく育ちます。そのためか、ヒエという名は「冷えに耐える」ことからきたという説があります。
ヒエがわが国で救荒作物として利用された話としては、天明から天保の飢饉(ききん)のときの話が知られています。二宮尊徳が門下生たちにヒエ作りを奨励し、飢饉を乗り切ったという話です。ヒエはほかの穀物よりはるかに長期の貯蔵に耐える点が特徴です。
<キビ>
「吉備国(きびのくに)」と呼ばれていた岡山や広島での収穫が多い穀物です。
〈必須アミノ酸すべてを含む高栄養食品、キヌア〉
<キヌア>
最近になって注目されている雑穀では、キヌアがあります。
南米ペルー、ボリビアの標高3000~4000mの高地で栽培されている穀物で、すぐれた栄養素が見直されています。たとえば、100g中にカルシウムは32mg、食物繊維は5.4g、鉄は3.8mg、マグネシウムは175mgを含んでいます(日本食品分析センターによる)。
アミノ酸構成もすぐれているといわれ、その栄養価の高さは、NASA(米航空宇宙局)が宇宙食に指定していることからもわかります。しかも、必須(ひっす)アミノ酸はすべて含んでいるのです。おもな効用としては、血中コレステロール降下、高血圧予防、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防、便秘(べんぴ)改善などに効果があるといわれています。
《調理のポイント》
雑穀は米に混ぜて炊(た)いたり、モチ米に混ぜたりして使います。アクがあるので、炊くときは2時間以上、水にひたしてから使いましょう。
アワ、ヒエ、キビは必須アミノ酸のうち、リジン、トリプトファンが欠けているので、リジンの多いダイズ食品や、トリプトファンを補うホウレンソウやたまごといっしょに食べるのがおすすめです。
キヌアはアワやヒエと似た粒状ですが、無味無臭なので、いろいろな料理に使えます。カレーやスープに入れたり、納豆にふりかけてもいいでしょう。