改訂新版 世界大百科事典 「イシガニ」の意味・わかりやすい解説
イシガニ
Charybdis japonica
甲殻綱ワタリガニ科のカニで,干潟あるいは岩礁の潮間帯から浅海にかけてすみ,とくに内湾に多い。肉は味がよいが,肉量が少なく,また,多量に漁獲することもむずかしいため,地方的に食用とされるにすぎない。甲幅6cm。甲は扇形で,額および甲の前側縁はともに鋭くとがった6本の突起からなっている。はさみ脚は強大で,長節の前縁に4棘(きよく),腕節の内角に1大棘,外縁に3小棘あり,掌部には基部に1棘あるほか,上縁に2棘ずつ2列に並ぶ。暗緑色で不規則な淡色部があるが,個体によっては青ないし紫色を帯びる。幼若個体では甲に短毛があるが,老成個体は滑らかで光沢がある。雑食性。東京湾から九州,韓国,中国,台湾に分布する。日本産のイシガニ属は16種あり,ほかに甲幅15cmに達するシマイシガニC.feriata,小型で鰓域(さいいき)に褐色斑があるフタホシイシガニC.bimaculata,鮮紅色で美しいアカイシガニC.milesなどが知られている。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報