カルタヘナ(読み)かるたへな(英語表記)Cartagena

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルタヘナ」の意味・わかりやすい解説

カルタヘナ
Cartagena

コロンビア北西部,ボリバル州の州都。カリブ海の入江カルタヘナ湾に臨む港湾都市。 1533年スペイン人により建設され,16世紀半ば以降南アメリカ北部で産する金その他の物資をスペイン本国へ運ぶための輸送基地となり,繁栄。海賊などの襲撃から市を守るため,早くから要塞化が進められ,サンフェリペデバラハス,サンフェルナンドなどの要塞や堅固な市壁が建設された。内陸部との連絡はおもに西のマグダレナ川によったが,17世紀半ばまでには市とマグダレナ川沿岸のカラマルを結ぶディケ運河が開通。 1811年いち早くスペインからの独立を宣言,その後の混乱期を通じてこの地域の主要港としての地位を保ったが,1840年代までに人口,貿易量ともに減少しはじめ,代わってマグダレナ川河口近くのバランキヤが主要港として発展。 19世紀末カラマルとの間に鉄道が通じて貿易がやや回復。 20世紀に入ってマグダレナ川沿岸の大規模な油田地帯の開発が始まり,1926年マグダレナ川中流部沿岸のバランカベルメハからカルタヘナ湾までパイプラインが通じ,再び発展しはじめ,コロンビアの主要な石油積出港となった。工業も発達し,砂糖タバコ,化粧品,織物皮革製品などを製造。市街は半島部とヘツェマニ島にかけて広がる市壁に囲まれた旧市街を中心に,南のマンガ,マンサニヨなどの島や東の本土方面へ向かって広がっている。旧市街にはスペイン風の細い街路や広場などとともに,華麗な大聖堂,サンペドロクラベル聖堂,宗教裁判所,カルタヘナ大学 (1824) などの古い建築物が多数残っており,1984年港,要塞とともに世界遺産の文化遺産に登録。バランキヤとメデリンを結ぶ幹線道路が通る。人口 52万 2318 (1985) 。

カルタヘナ
Cartagena

スペイン南東部,ムルシア州,ムルシア県の都市。地中海に面した天然の良港で,エルフェロルやサンフェルナンドとともにスペインの重要な軍港となっている。前3世紀カルタゴ人によってイベリア人の集落跡に建設。前 209年ローマの名将 P.C.スキピオ・アフリカヌスに占拠され,カルタゴ・ノウァ (新カルタゴの意) と呼ばれて繁栄した。近くに産する金,銀がカルタゴ人やローマ人に巨大な富をもたらした。その後西ゴート族,ムーア人の支配を受けたが,13世紀アラゴン王国により征服された。 1936~39年の内乱時には人民戦線政府の軍港として利用された。おもな輸出品は鉱石,オリーブ油で,製錬,化学,造船工業のほかガラス製品などを産する。ムルシアからの鉄道の支線の終着駅。人口 16万 6736 (1991推計) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルタヘナ」の意味・わかりやすい解説

カルタヘナ(スペイン)
かるたへな
Cartagena

スペイン南東部、ムルシア地方の港湾都市。人口18万4686(2001)。丘陵に囲まれた深い入り江の奥に位置する天然の良港で、古くから地中海に臨む要害の地として利用されてきた。ガリシア地方のビーゴに次ぐ軍港である。また輸出港としても重要で、周辺で産する鉄、鉛、錫(すず)、銅などの鉱石やそれらの工業製品、および農産物などを輸出する。年間約500万トンの輸出量は、アルヘシラス、ビルバオ、バルセロナに次いで第4位である。精油工場も立地する。紀元前3世紀に、スペイン地方におけるカルタゴ人のもっとも重要な植民地として建設された。ローマ時代にはカルタゴ・ノバ(新カルタゴ)とよばれ、この地方の中心都市として繁栄した。711年ムーア人に占領され、独立公国が創設された。その後何度も戦場となり、アルフォンソ13世はここからフランスに向かって亡命し、1936~39年のスペイン内戦でも、共和派の重要な海軍基地となった。

[田辺 裕・滝沢由美子]


カルタヘナ(コロンビア)
かるたへな
Cartagena

南アメリカ北西部、コロンビア北部、カリブ海岸の港湾都市。人口87万7238(1999)、104万7005(2019推計)。マグダレナ川とカウカ川の河谷というコロンビアの経済活動の中核地域を後背地にもち、プラチナ、コーヒー、タバコ、バナナ、砂糖などの取引、輸出が盛んである。織物、皮革、薬品などの工業があり、バランカベルメハの精油所からの油送管のターミナルになっている。1533年に創立された西半球最古の都市の一つで、城壁で囲まれ、湿地と湖に隔てられた古い町がカルタヘナ湾岸に残っている。

[山本正三]

 1984年、町並は「カルタヘナの港、要塞群と歴史的建造物群」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録された。

[編集部]

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