カルタヘナ(英語表記)Cartagena

デジタル大辞泉 「カルタヘナ」の意味・読み・例文・類語

カルタヘナ(Cartagena)

スペイン南東部、ムルシア州の港湾都市地中海に面し、天然の良港をもつ。前225年、カルタゴの植民地として建設。スペイン内戦時に共和国軍の海軍基地が置かれ、現在もビーゴに次ぐ軍港として知られる。ローマ劇場、国立海事考古学博物館、海事博物館などがある。人口、行政区21万(2008)。
コロンビア北部、カリブ海に面する港湾都市。スペイン領時代の1533年に植民の根拠地として建設。旧市街は城塞群に囲まれ、丘の上に南アメリカで最も強固とされるサンフェリペ要塞がある。1984年に「カルタヘナの港、要塞群と建造物群」の名称で世界遺産(文化遺産)に登録された。人口、都市圏92万(2008)。

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精選版 日本国語大辞典 「カルタヘナ」の意味・読み・例文・類語

カルタヘナ

  1. ( Cartagena )
  2. [ 一 ] スペインの南東部、地中海に面する港湾都市。紀元前二二五年、カルタゴの植民市として建設され、ローマ、ビザンチン領などをへて一四世紀カスティーリャ王国が領有。
  3. [ 二 ] 南アメリカ、コロンビアのカリブ海に面する都市。一六世紀から開ける。コーヒーバナナなど輸出が盛ん。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルタヘナ」の意味・わかりやすい解説

カルタヘナ
Cartagena

コロンビア北西部,ボリバル州の州都。カリブ海の入江,カルタヘナ湾に臨む港湾都市。 1533年スペイン人により建設され,16世紀半ば以降南アメリカ北部で産する金その他の物資をスペイン本国へ運ぶための輸送基地となり,繁栄。海賊などの襲撃から市を守るため,早くから要塞化が進められ,サンフェリペデバラハス,サンフェルナンドなどの要塞や堅固な市壁が建設された。内陸部との連絡はおもに西のマグダレナ川によったが,17世紀半ばまでには市とマグダレナ川沿岸のカラマルを結ぶディケ運河が開通。 1811年いち早くスペインからの独立を宣言,その後の混乱期を通じてこの地域の主要港としての地位を保ったが,1840年代までに人口,貿易量ともに減少しはじめ,代わってマグダレナ川河口近くのバランキヤが主要港として発展。 19世紀末カラマルとの間に鉄道が通じて貿易がやや回復。 20世紀に入ってマグダレナ川沿岸の大規模な油田地帯の開発が始まり,1926年マグダレナ川中流部沿岸のバランカベルメハからカルタヘナ湾までパイプラインが通じ,再び発展しはじめ,コロンビアの主要な石油積出港となった。工業も発達し,砂糖,タバコ,化粧品,織物,皮革製品などを製造。市街は半島部とヘツェマニ島にかけて広がる市壁に囲まれた旧市街を中心に,南のマンガ,マンサニヨなどの島や東の本土方面へ向かって広がっている。旧市街にはスペイン風の細い街路や広場などとともに,華麗な大聖堂,サンペドロクラベル聖堂,宗教裁判所,カルタヘナ大学 (1824) などの古い建築物が多数残っており,1984年港,要塞とともに世界遺産の文化遺産に登録。バランキヤとメデリンを結ぶ幹線道路が通る。人口 52万 2318 (1985) 。

カルタヘナ
Cartagena

スペイン南東部,ムルシア州,ムルシア県の都市。地中海に面した天然の良港で,エルフェロルやサンフェルナンドとともにスペインの重要な軍港となっている。前3世紀カルタゴ人によってイベリア人の集落跡に建設。前 209年ローマの名将 P.C.スキピオ・アフリカヌスに占拠され,カルタゴ・ノウァ (新カルタゴの意) と呼ばれて繁栄した。近くに産する金,銀がカルタゴ人やローマ人に巨大な富をもたらした。その後西ゴート族,ムーア人の支配を受けたが,13世紀アラゴン王国により征服された。 1936~39年の内乱時には人民戦線政府の軍港として利用された。おもな輸出品は鉱石,オリーブ油で,製錬,化学,造船工業のほかガラス製品などを産する。ムルシアからの鉄道の支線の終着駅。人口 16万 6736 (1991推計) 。

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改訂新版 世界大百科事典 「カルタヘナ」の意味・わかりやすい解説

カルタヘナ
Cartagena

コロンビア北部,ボリーバル県の県都。大都市域人口103万0149(2005)。カリブ海に面し,1533年アンティオキア地域の貴金属や砂糖の積出港として創設された。スペイン帝国が植民地で開設した数少ない貿易港の一つで,本国の商船隊(ガレオネス)が定期的に寄港した。その繁栄ゆえにたびたびイギリス海軍に攻撃され,なかでも1741年の都市攻撃は凄絶で,今日なお多くの城塞が当時の状況を物語っている。独立期にあっては市民がこぞって革命家ボリーバルを支援し祖国解放に貢献した。ボリーバルはこの都市を〈英雄の都市〉とたたえて,その協力に報いた。糖業,コーヒー生産が経済活動の中心をなした19世紀後半からは農産物の集散地,あるいは輸出港,また20世紀前半からは石油・綿花の積出港となり,今日では同国最大の石油化学工業都市となっている。なお1969年当地でアンデス地域統合を目ざすカルタヘナ協定が締結された。
執筆者:


カルタヘナ
Cartagena

スペイン南東部,地中海沿岸の都市。人口18万4686(2001)。ムルシア県の商工業の中心地で,金属工業,造船業,石油精製所があり,また県下で採掘される鉛,鉄鋼石,ニッケルの積出港となっている。地中海沿岸で最も重要な海軍基地でもある。温暖な地中海気候に恵まれ,都市周辺ではオレンジ,ブドウ,オリーブ栽培が盛んである。カルタヘナの名は,紀元前223年同市を植民化したカルタゴ人が命名したカルタゴ・ノウァ(〈新カルタゴ〉の意)に由来。地中海交易活動の拠点であり,特にローマ時代に最も栄えたが,イスラム支配の時代にはその役割をアルメリア港に譲った。カルタヘナを再征服したキリスト教徒は,司教座をムルシアに移したため,衰退へと向かった。17世紀フェリペ2世が要塞を建設し,軍事的機能を回復する。1873年スペイン南部諸都市の連邦主義運動が高揚したとき,カルタヘナはその一大中心地であった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルタヘナ」の意味・わかりやすい解説

カルタヘナ(スペイン)
かるたへな
Cartagena

スペイン南東部、ムルシア地方の港湾都市。人口18万4686(2001)。丘陵に囲まれた深い入り江の奥に位置する天然の良港で、古くから地中海に臨む要害の地として利用されてきた。ガリシア地方のビーゴに次ぐ軍港である。また輸出港としても重要で、周辺で産する鉄、鉛、錫(すず)、銅などの鉱石やそれらの工業製品、および農産物などを輸出する。年間約500万トンの輸出量は、アルヘシラス、ビルバオ、バルセロナに次いで第4位である。精油工場も立地する。紀元前3世紀に、スペイン地方におけるカルタゴ人のもっとも重要な植民地として建設された。ローマ時代にはカルタゴ・ノバ(新カルタゴ)とよばれ、この地方の中心都市として繁栄した。711年ムーア人に占領され、独立公国が創設された。その後何度も戦場となり、アルフォンソ13世はここからフランスに向かって亡命し、1936~39年のスペイン内戦でも、共和派の重要な海軍基地となった。

[田辺 裕・滝沢由美子]


カルタヘナ(コロンビア)
かるたへな
Cartagena

南アメリカ北西部、コロンビア北部、カリブ海岸の港湾都市。人口87万7238(1999)、104万7005(2019推計)。マグダレナ川とカウカ川の河谷というコロンビアの経済活動の中核地域を後背地にもち、プラチナ、コーヒー、タバコ、バナナ、砂糖などの取引、輸出が盛んである。織物、皮革、薬品などの工業があり、バランカベルメハの精油所からの油送管のターミナルになっている。1533年に創立された西半球最古の都市の一つで、城壁で囲まれ、湿地と湖に隔てられた古い町がカルタヘナ湾岸に残っている。

[山本正三]

 1984年、町並は「カルタヘナの港、要塞群と歴史的建造物群」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録された。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「カルタヘナ」の意味・わかりやすい解説

カルタヘナ(コロンビア)【カルタヘナ】

コロンビア北部,カリブ海岸の港湾都市。植民地時代からの重要な港で,しばしば海賊や英国海軍の攻撃を受けた。20世紀前半から石油,綿花の積出港となり,現在は同国最大の石油化学工業都市である。防壁に取り囲まれた旧市街には植民地時代の建物が数多く残っており,1984年世界文化遺産に登録された。一方,近郊の海岸は高級リゾートとして開発が進んでいる。1533年創設。90万2311人(2006)。
→関連項目プエルト・カベヨ

カルタヘナ(スペイン)【カルタヘナ】

スペイン南東部,地中海岸の港湾都市。海軍基地・工廠(こうしょう)があり,鉱石などの積出港。冶金・紡績工業も行われる。前223年カルタゴの植民市が建設され,古代ローマ時代に繁栄。カルタヘナはカルタゴ人が名づけた〈カルタゴ・ノバ(新カルタゴ)〉に由来。8―13世紀イスラム勢力の支配下にあった。21万5757人(2011)。

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