イソクラテス(読み)いそくらてす(英語表記)Isokratēs

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソクラテス」の意味・わかりやすい解説

イソクラテス
いそくらてす
Isokratēs
(前436―前338)

アテネの修辞家、政治評論家。ゴルギアスに学び、法廷弁論執筆にも携わったが、紀元前392年ごろアテネに学校を開き、政治家ティモテオスをはじめ多くの子弟を教育した。有力ポリス間の和解とペルシア遠征とを唱えた前380年の『オリンピア大祭演説Panegyrikos、ペルシア征討をマケドニアフィリッポス2世に期待した前346年の『フィリッポスPhilipposなどの政治評論は、前4世紀のギリシア社会の問題点をよくとらえたものとして重視されている。演説形式の作品21編、書簡9編が伝存しており、その技巧に富んだ文章は散文模範として、キケロを通じて近代まで大きな影響力をもった。

中村 純]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソクラテス」の意味・わかりやすい解説

イソクラテス
Isokratēs

[生]前436. アテネ
[没]前338. アテネ
ギリシアの散文作家,雄弁家,教育者。アッチカ十大雄弁家の一人。修辞学教師から法廷演説代作者を経て,前 392年頃ソフィストの学校とは異なる学校を開き,人格形成,全人教育を目的に雄弁術のみならず広く一般教養を教え,道徳性を重んじた。開設以来全ギリシア世界から弟子を集め,すぐれた政治家,雄弁家,歴史家を輩出した。政論家としては一貫してギリシア統一とペルシア遠征を説いて,ヘレニズム先覚者となり,散文作家としてはリズムと調和を重んじて,響きの美しい言葉と長い副文の積重ねによって均整のとれた流麗豊満な文体を生み出した。作品は演説や論文 21編と書簡9編が伝わる。

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