日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタチザメ」の意味・わかりやすい解説
イタチザメ
いたちざめ / 鼬鮫
軟骨魚綱メジロザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。イタチザメ科Galeocerdidaeはイタチザメ属GaleocerdoのイタチザメG. cuvier(英名tiger shark)1属1種からなる。イタチザメは吻(ふん)が短くて丸く、かつ縦扁(じゅうへん)すること、噴水孔があること、上下両顎(りょうがく)の歯が同形で、尖頭(せんとう)部分が外側に傾き、その縁に鋸歯(きょし)が強く発達すること、尾柄(びへい)側面にキール(隆起線)が発達することなどが特徴である。さらに体側の横縞(よこじま)が顕著な目印となるが、これは成長に伴って薄くなる。全長5メートルほどになるが、7.4メートルの記録もある。河口や港湾にも侵入するが、ときに水深1000メートル以深にまで潜るという。非常に危険なサメで、国際サメ被害目録(ISAF:International Shark Attack File)によれば、ホホジロザメに次いで人の被害が多い。口が大きく、歯が頑丈なために、ウミガメなどもそのまま捕食し、さらに食べ物以外の物も胃の中からみつかるために「ひれをもつごみ箱」といわれることもある。
生殖方法は非胎盤型の胎生で、子宮内で卵黄による初期の発生を終えると母親から体液を通して栄養をもらい成長を続けるが、詳しいことは不明である。産まれるときの大きさは50~90センチメートルで、最多で82尾の子を産む。世界中の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、日本近海ではおもに房総半島や伊豆諸島以南に生息する。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、準絶滅危惧(きぐ)(NT)に指定されている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]