イタビカズラ(読み)いたびかずら

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イタビカズラ」の意味・わかりやすい解説

イタビカズラ
Ficus nipponica

クワ科の常緑性つる植物。福島・新潟県以南の本州から琉球列島朝鮮半島,台湾,中国大陸中南部に分布し,暖地の林内に生える。幹は長さ2~5mで分枝し,下部は地をはって根をおろし木や岩にからまり,梢部は枝を出す。特に生長したものでは,幹が径 8cmに達し多くの枝を出して葉を茂らせる。若枝には細毛がある。葉は有柄で互生し,革質,長楕円状披針形で長さ7~12cm,幅2~3cm,全縁で先は鋭くとがり,基部は円形。表面は平滑で淡緑色,裏面は帯粉白色で隆起した網脈が目立つ。夏,葉腋に1~2個の花嚢をつける。雌雄異株。花嚢は長卵形で有毛,秋遅く熟して紫黒色となる。和名イタビイヌビワ (犬枇杷)の一名である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタビカズラ」の意味・わかりやすい解説

イタビカズラ
いたびかずら
[学] Ficus sarmentosa Buch.-Ham. ex Sm. subsp. nipponica (Franch. et Sav.) H.Ohashi
Ficus oxyphylla Miq.

クワ科(APG分類:クワ科)の常緑藤本(とうほん)。幹は褐色でよく分枝し、不定根を出して石や木によじ登る。托葉(たくよう)は膜質で長さ約5ミリメートル。葉は互生し卵状長楕円(ちょうだえん)形で柄があり、先は長く鋭くとがって、葉身の基部は円く、全縁、長さ5~12センチメートル、革質で裏面は灰白色。雌雄異株。花序は壺(つぼ)状で、葉のわきに径約1センチメートルのいちじく状花序を1~2個つける。ほとんど無柄で基部に包葉があり、中に小さな雄花雌花虫癭(ちゅうえい)花をもち、紫黒色に熟す。石垣や崖(がけ)に生え、新潟、福島県以西の本州、四国、九州、沖縄、および朝鮮半島南部、台湾、中国に分布する。

[島袋敬一 2019年12月13日]

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