日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェッセル」の意味・わかりやすい解説
ウェッセル
うぇっせる
Johan Herman Wessel
(1742―1785)
ノルウェーの詩人。デンマークのコペンハーゲン大学に学び、その地でおもに生活し、鋭い風刺をもつ散文『地主、犬殺し、鍛冶(かじ)屋およびパン屋』や、気のきいた風刺喜劇『靴下なしの恋愛』(1772)で文名をあげた。当時まだデンマークの統治下にあった祖国の復興を念願し、まずコペンハーゲンに「ノルウェー協会」を設立、初めは友人らとノルウェー文化の振興を語り合うだけの文化運動だったが、しだいにそれが祖国独立を求める気運を呼び起こし、後の独立の先駆をなした。概して寡作だったが、人間の愚かさをえぐるきびきびした筆致、厳しい批判精神は、いまも国民をひきつけている。詩もかなり残っている。
[山室 静]