ウェルウィッチア(読み)うぇるうぃっちあ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェルウィッチア」の意味・わかりやすい解説

ウェルウィッチア
Welwitschia mirabilis

ウェルウィッチア科の裸子植物。アフリカ南西部の砂漠に自生する。1860年にポルトガル領アンゴラで F.ウェルウィッチにより,また同年ナミビアのダマラランドで J.T.ベインズにより初めて発見され,J.フッカーが命名した。1属 1種の非常に珍しい植物で,その外形は他のいかなる植物とも異なる。茎の大部分は地下に埋まり,地上には倒円錐形の太い部分だけが露出する。その頂部は直径 1mぐらいの広さがあり,縁に 2枚の巨大な帯状の葉をつける。葉は年々大きくなり,数百年も生き続けて,古くなると縦に裂けたり,ねじれたりして地表に展開し,長さ 3~3.5mにも達する。雌雄異株で,いずれも円錐形の花序を茎の頂部につける。雄花には内外 2対の花被と,その内部に 6個のおしべがあり,おしべの基部は互いに癒着して筒状になる。花の中心には 1個の退化した胚珠があるが生殖機能はない。雌花は花被が平らな翼状になり,内部に 1個の胚珠があってその先端が嘴状に長く伸び,花被の外部に突き出す。この胚珠中に大量の種子を生じ,種子は散布後長年にわたって休眠して,まれに訪れる降雨のときに発芽する。このように雄花に両性花形跡がみられ,また胚珠が花被によって硬く包まれていることなどから,近縁マオウグネツムの類とともに裸子植物のなかでもきわめて特異なものとされる。和名はサバクオモト,現地名はタンボア tumboaである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェルウィッチア」の意味・わかりやすい解説

ウェルウィッチア
うぇるうぃっちあ
[学] Welwitschia mirabilis (Welm.) Hook.f.

ウェルウィッチア科(分子系統に基づく分類:ウェルウィッチア科)の裸子植物。奇妙な形態をした珍奇な植物で1属、1種。一名サバクオモト、園芸名キソウテンガイ(奇想天外)。主幹は数十センチメートルあり、太くて短く、倒円錐(えんすい)形をなし砂の上に出る。根は直根で地中深く入る。本葉は2枚で対生し、濃緑色で長さ2~3メートル、幅20センチメートルくらいとなり、帯状で、革質をなし平行脈をもち、古くなると風などで葉脈に沿って縦にいくつにも裂ける。雌雄異株。幹頂の周辺部の葉の基部近くから小枝を出し、花をつける。雄花序は橙黄(とうこう)色で四角張った紡錘形で十字対生する鱗片葉(りんぺんよう)に覆われる。雄花には2対の包葉と6本の雄しべがある。雌花序は赤褐色で太くて長さ10センチメートル、幅3~4センチメートル。雌花は1個の胚珠(はいしゅ)だけからなる。風のほか昆虫も花粉を媒介するという。球果はモミ属に似ている。ナミビアの海岸近いナミブ砂漠などの谷あいだけに自生する。寿命の長い植物で600年から1000年も生き、世界的に珍しい植物で、特別保護を受けており、その採集は厳しく禁止されている。

[林 弥栄 2018年3月19日]

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