改訂新版 世界大百科事典 「グネツム」の意味・わかりやすい解説
グネツム
Gnetum
裸子植物グネツム科の1属で,この属だけでグネツム科をなす。南アメリカ・アマゾン地方,アフリカ南西海岸,インドから東南アジア,中国南部およびニューギニアにかけて分布し,熱帯降雨林に生育し,約40種が知られる。大部分はつる性で,まれに高木となる。雌雄異株,花は穂状の複合花序をつくる。葉は対生し,ほぼ楕円形で先がとがり,網状脈を有し,一見双子葉植物の常緑広葉樹の葉のようである。近縁のマオウ,ウェルウィッチアとともにグネツム綱(マオウ綱)として分類される。この類は花に花被があり,雌花ではこの花被が完全に胚珠を包み,子房に似た構造を呈し,材には道管があり,裸子植物としては特異な形態を示すので,原始被子植物Protoangiospermaeまたは衣子植物Chlamydospermaeとして裸子植物から分離・独立させ,被子植物との中間型植物として扱われることもある。
インド,マレーシアに分布するグネツム・グネモンG.gnemon L.が最も人間とのかかわりが深い種で,高さ2.5mから20mほどの樹木である。葉はサカキに似た常緑の広葉で,若い葉を野菜代りにする。また種子の内乳にはデンプンを多量に含み,食用とされるが,なまのままでは苦味があって食べられない。材は油を含み,耐水性があり,樹皮の繊維はロープなどに利用される。数種のつる性の種も,同様に種子が食用にされ,また繊維も利用されている。
執筆者:西田 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報