ウパス(読み)うぱす(英語表記)upas

翻訳|upas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウパス」の意味・わかりやすい解説

ウパス
うぱす
upas
[学] Antiaris toxicaria Lesch.

クワ科(APG分類:クワ科)の常緑高木で、高さが70メートルに達するものもある。長楕円(ちょうだえん)形全縁の葉を互生し、雄花雌花は別々につき、果実はイチジク大で中に1種子をもつ。樹皮から出る乳液を矢毒として用いるので有名である。幹に穴をあけると粘性のある乳液が出てくる。これを乾燥して暗褐色のゴム樹脂としたものが東南アジアでウパスアンチアリスとかウパスイポーと称される矢毒である。乳液が血管に入ると致死的な毒性を現すが、内服した場合には毒性を示さないので、これで殺した動物の傷口付近の肉を切り捨てる必要はない。含まれているアンチアリンという配糖体が心臓に対してジギタリスゴマノハグサ科の植物)様の強い作用をもつので、少量用いると心臓と循環系を興奮させる薬となり、多量では心筋毒となる。種子は解熱止瀉(ししゃ)剤として用いられる。樹皮からはじょうぶな繊維がとれ、袋布、縄、敷物に用いる。ミャンマービルマ)、インド南部、スリランカマレー半島、インドネシアに分布する。

[長沢元夫 2019年12月13日]

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