ウルップソウ(英語表記)Lagotis glauca Gaertn.

改訂新版 世界大百科事典 「ウルップソウ」の意味・わかりやすい解説

ウルップソウ
Lagotis glauca Gaertn.

高山の湿った砂礫地(されきち)に生えるウルップソウ科多年草和名は,千島列島ウルップ島で最初に見つけられたことによる。茎は短く太い根茎に分かれて株をつくり,先に多くの葉が群生する。葉は卵円形または腎形の肉質で先は円く,長さ5~10cm,幅5~13cm,先の鈍い重鋸歯がある。夏,葉の間から高さ15~25cmの花茎を伸ばし,円柱形で大きな苞葉のある花穂に多数の青紫色の小さな花をつける。萼は筒状で腹面が基部まで裂ける。花冠は唇形で上下に分かれ,下唇は2裂する。果実は長楕円形の堅果で,1~2個の種子があり,裂開しない。本州の八ヶ岳,北アルプス北部,北海道の礼文島千島カムチャツカ,アレウト列島に分布する。大雪山には葉の狭卵形のホソバウルップソウL.yesoensis Tatew.が,夕張岳には花が白色ユウバリソウL.takedana Miyabe et Tatew.がある。いずれも,まれに山草として栽植される。
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百科事典マイペディア 「ウルップソウ」の意味・わかりやすい解説

ウルップソウ

ウルップソウ科の多年草。白馬岳(しろうまだけ),八ヶ岳,北海道礼文島の礫(れき)地にはえ,千島,カムチャツカ,アラスカにも分布。葉は広卵形で長さ10cm内外,厚く,つやがある。夏,20cm前後の花茎を出し,青紫色の小さい花を穂状につける。花冠は箇状唇形(しんけい)で長さ約10mm。千島のウルップ島からこの名が出た。ハマレンゲともいう。近縁種にホソバウルップソウ(大雪山),ユウバリソウ(夕張岳)がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルップソウ」の意味・わかりやすい解説

ウルップソウ
Lagotis glauca

ウルップソウ科の多年草。北東アジアとアラスカの寒帯や高山帯に生じる。全草やや多肉質でベンケイソウ科のイワレンゲなどに似ているところからハマレンゲの名もある。根生葉は有柄の広卵形で長さ約 10cmになる。夏に,高さ 20cmぐらいの花茎を出し,先端に密に花をつける。萼はへら形で,花冠は淡紫色で湾曲した長い筒形となり,先は2裂して唇形となる。果実は2つの堅果となる。日本では本州中部の高山の砂礫地と礼文島に知られる。また,北海道の夕張岳のものは全体が小型で,特にユウバリソウ L. glauca var. takedanaといって変種とすることがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルップソウ」の意味・わかりやすい解説

ウルップソウ
うるっぷそう
[学] Lagotis glauca Gaertn.

ウルップソウ科(APG分類:オオバコ科)の多年草。葉は根際に群生し、肉質で卵円形または腎臓(じんぞう)形、鈍鋸歯(どんきょし)がある。夏、葉の間から花茎を伸ばし、密に多数の花を穂状につける。萼(がく)は膜質で鱗片(りんぺん)状。花冠は青紫色で唇形。雄しべは2本で花筒の上部につく。高山の湿った砂礫地(されきち)に生え、八ヶ岳(やつがたけ)、北アルプス、北海道の礼文(れぶん)島、千島、カムチャツカに分布する。名は、千島の得撫(うるっぷ)島で最初に採集されたのでいう。

[山崎 敬 2021年8月20日]


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