エコロジカルフットプリント(読み)えころじかるふっとぷりんと(その他表記)ecological footprint

デジタル大辞泉 の解説

エコロジカル‐フットプリント(ecological footprint)

人間の生活が自然環境に依存している度合いを分かりやすく示した指標。生活を維持するために必要な一人当たりの面積を算出したもので、数値が大きいほど環境に与える負荷が大きい。EF
[補説]食料木材などの資源供給するために必要な陸地水域二酸化炭素を吸収するために必要な森林の面積、住宅・道路・工場などの建造物が占有する土地の面積を合計して算出し、平均的生物生産力を持つ土地1ヘクタールに相当するグローバルヘクタール(gha)という単位で表される。世界の全人口が日本人と同じ水準の生活をするためには地球が2.5個必要とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

エコロジカルフットプリント
えころじかるふっとぷりんと
ecological footprint

人間の活動が地球環境へ与えるダメージ(負荷)の大きさを面積で表す指標。英語の頭文字をとってEFと略称する。「人間の活動が地球環境を踏みつけた足跡」との意味である。暮らしを維持するのに必要な農耕牧草地、森林、漁場などの面積に、道路・ビル・ダムなどの建造物の面積と、排出した二酸化炭素(CO2)などの吸収・浄化に必要な森林・海洋などの面積を合算して表す。これと生物学的に供給可能な面積バイオキャパシティbiocapacityを比較し、エコロジカルフットプリントが供給可能面積を上回る状態(オーバー・シュート)ならば、持続可能でないと判定する。つまりエコロジカルフットプリントは、人間の活動が環境面や生態学的に持続可能かどうかを判断するための指標である。あくまでも理論値であり、実際の土地面積と区別するため、単位にグローバルヘクタール(gha)を用いる。面積が大きいほど、環境負荷が大きいことを示す。国民1人当り、都道府県別など種々の数値が試算され、環境負荷の少ない街づくりなどに活用されている。

 1990年代初頭、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学教授のウィリアム・リースWilliam E. Rees(1943― )と指導学生だったマティス・ワケナゲルMathis Wackernagel(1962― )が提唱した概念から生まれた。同指標を応用し「(2020年の)生活を維持するには地球1.6個分の自然資源が必要」といった、直感的に理解しやすい形で環境破壊に警鐘を鳴らす、世界自然保護基金(WWF)の報告書「生きている地球レポートLiving Planet Report」が有名である。欧米やオーストラリアなどで活用が進んでおり、日本でも国土交通省や環境省が指標として利用し、政策へ適用する自治体も出ている。ただ、エコロジカルフットプリントの計算理論や手法は完全なものとはいいがたく、資源の偏在、貿易、技術革新を軽視しているとの指摘が経済学者や経済界から出ている。

[矢野 武 2022年10月20日]

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知恵蔵 の解説

エコロジカル・フットプリント

1991年に、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のW.リースとM.ワクナゲルらによって開発された持続可能性指標の1つ。人間の経済活動が生態学的な意味において持続可能か否かを判定することを目的としている。具体的には、ある特定の地域の経済活動、またはある特定の物的生活水準を維持するのに必要とされる生産可能な土地および水域面積の合計、すなわち需要サイドの面積が供給サイドの生態系面積を超えていれば、オーバーシュート(行き過ぎ)が発生し持続可能ではないと判定される。エコロジカル・フットプリントの応用例としては、WWF(世界自然保護基金)などが発表した2004年度版『生きている地球報告書』が有名。同報告書によると地球のエコロジカル・フットプリントは、地球の生物生産力を1980年代に超過し、2001年時点ですでに約20%オーバーシュートしているという。また、日本の1人当たりエコロジカル・フットプリントは4.3ha(米国は9.5ha)。地球の生物生産力は1人当たり1.8haなので、世界中の人々が仮に日本人並みの生活を送ることになると、地球が2.4個(米国人並みだと5.3個)必要になる。なお、近年は自治体レベルでの応用例も増えてきているが、世界共通の計算方法が確立していないなど、計測の理論と方法に課題も残されている。

(植田和弘 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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