人間の活動が地球環境へ与えるダメージ(負荷)の大きさを面積で表す指標。英語の頭文字をとってEFと略称する。「人間の活動が地球環境を踏みつけた足跡」との意味である。暮らしを維持するのに必要な農耕・牧草地、森林、漁場などの面積に、道路・ビル・ダムなどの建造物の面積と、排出した二酸化炭素(CO2)などの吸収・浄化に必要な森林・海洋などの面積を合算して表す。これと生物学的に供給可能な面積バイオキャパシティbiocapacityを比較し、エコロジカルフットプリントが供給可能面積を上回る状態(オーバー・シュート)ならば、持続可能でないと判定する。つまりエコロジカルフットプリントは、人間の活動が環境面や生態学的に持続可能かどうかを判断するための指標である。あくまでも理論値であり、実際の土地面積と区別するため、単位にグローバルヘクタール(gha)を用いる。面積が大きいほど、環境負荷が大きいことを示す。国民1人当り、都道府県別など種々の数値が試算され、環境負荷の少ない街づくりなどに活用されている。
1990年代初頭、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学教授のウィリアム・リースWilliam E. Rees(1943― )と指導学生だったマティス・ワケナゲルMathis Wackernagel(1962― )が提唱した概念から生まれた。同指標を応用し「(2020年の)生活を維持するには地球1.6個分の自然資源が必要」といった、直感的に理解しやすい形で環境破壊に警鐘を鳴らす、世界自然保護基金(WWF)の報告書「生きている地球レポートLiving Planet Report」が有名である。欧米やオーストラリアなどで活用が進んでおり、日本でも国土交通省や環境省が指標として利用し、政策へ適用する自治体も出ている。ただ、エコロジカルフットプリントの計算理論や手法は完全なものとはいいがたく、資源の偏在、貿易、技術革新を軽視しているとの指摘が経済学者や経済界から出ている。
[矢野 武 2022年10月20日]
(植田和弘 京都大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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