エネルギー等分配則(読み)えねるぎーとうぶんぱいそく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エネルギー等分配則」の意味・わかりやすい解説

エネルギー等分配則
えねるぎーとうぶんぱいそく

運動の自由度(位置xyzと運動量pxpypzの自由度)当り(1/2)kBTkBボルツマン定数Tは絶対温度)の熱エネルギーが均等に分配されるという統計力学法則。エネルギー等配の法則、または単に等分配則ともいう。

 比熱は一つの運動の自由度当り(1/2)kBとなる。一般にN個の粒子からなる系では自由度の数が6Nであるため、分配されるエネルギーは3NkBTとなる。そのため、古典的な調和振動子系での比熱は、デュロン‐プティの法則として知られているように3NkBである。ただし、1原子分子から構成される気体では、運動量のみの寄与により(3N/2)kBTの熱エネルギーをもつ。酸素気体のように2原子分子からなる気体の場合には、各分子の自由度として、重心の運動の自由度3に加えて、重心の周りの回転を表す自由度2が加わり、全体の運動の自由度は5となる。そのため、この場合、1個の分子の比熱は(5/2)kBとなる。このような考えから計算される気体の比熱は、常温近傍で実験値とよく一致する。温度が上がると分子内の振動の自由度が加わり、さらに比熱は(7/2)kB、(9/2)kB大きくなる。このように、自由度の数え方としてどの部分まで数えるのかに関しては恣意(しい)的なものがあり、その温度で有効に働いている自由度を考える必要がある。自由度が有効に働くかどうかについては量子力学的な考察が必要となる。実際に、量子力学的には、絶対零度での比熱は0となる(熱力学第三法則)。

[宮下精二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エネルギー等分配則」の意味・わかりやすい解説

エネルギー等分配則
エネルギーとうぶんぱいそく
law of equipartition of energy

古典統計力学によると,エネルギーが座標または運動量の2乗に比例した項の和で表わされる場合,熱平衡における各項の平均値は,すべて ( 1/2 ) kT ( k はボルツマン定数,T は絶対温度) に等しくなる。したがって,この場合の全エネルギーの平均値は系全体の自由度の数を f とすれば,( 1/2 ) fkT に等しくなる。このように各自由度のエネルギーの平均値がすべて等しくなることをエネルギー等分配則という。たとえば自由粒子では,各粒子は3方向に運動しているから,1つの粒子の自由度は3であり,したがって N 粒子の平均エネルギーは ( 3/2 ) NkT になる。また一次元の調和振動子は運動エネルギーと位置エネルギーをもっているから,エネルギーの平均値は kT になる。したがって固体の原子が平衡点のまわりに調和振動していると考えたときの平均エネルギーは3 NkT ( N は原子の総数) となり,比熱は3 Nk になる。ただし量子統計力学では,エネルギー準位間隔に比べて kT が十分大きいときだけ成り立つ。

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