熱力学の法則(読み)ネツリキガクノホウソク

  • ねつりきがく
  • ねつりきがくのほうそく〔ハフソク〕
  • の 法則(ほうそく)
  • 熱力学
  • 熱力学の法則 laws of thermodynamics

デジタル大辞泉の解説

熱力学の基礎をなす三法則。(1)第一法則。物体に外部から加わった仕事と熱量との和は、内部エネルギーの増加に等しいという法則。と仕事は等で、熱を含めてエネルギーは保存される。(2)第二法則。熱は高温から低温に移動し、その逆は起こらないという法則。あるいは、孤立系エントロピー不可逆変化によって増大するという法則(エントロピー増大の法則)。(3)第三法則。絶対零度ではどんな物質エントロピーも零になるという法則。
[補説]これら三法則に加え、物体AとBが熱平衡にあり、物体BとCも熱平衡な場合、AとCは必ず熱平衡の状態であるという熱力学第ゼロ法則が定義される。

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百科事典マイペディアの解説

〔第1法則〕 〈物体系が状態AからBへ移るとき,物体に外部からなされた仕事と外から加えられた熱量との和は,状態A,Bだけできまり途中の経路に関係しない〉。これは熱現象に適用されたエネルギー保存の法則。〔第2法則〕 種々の表現があるが内容は同等。〈高温の物体から低温の物体に熱を移し,それ以外には何の変化も残さないという過程は不可逆である〉(クラウジウス)。〈仕事が熱になる過程は不可逆である〉(ケルビン)。これは不可逆変化の存在を主張するもので,数学的にはエントロピーの存在と増大法則で定式化される。〔第3法則〕 ネルンストの熱定理(1906年)とも。〈化学組成の単一な均質物質のエントロピーは,絶対0度に近づくにつれて化学的性質・相・圧力に無関係に0に近づく〉(プランク)。これは〈有限回の操作によって絶対0度の状態に達することは不可能である〉とも表現される。
→関連項目エネルギーエントロピー(熱)カルノーサイクルクラウジウスケルビンジオーク絶対零度内部エネルギー熱力学

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世界大百科事典 第2版の解説

熱が関係するさまざまな現象を取り扱う普遍的な理論体系である熱力学は,熱平衡状態と経験的温度に関する第0法則,エネルギー保存則である第1法則,熱現象の不可逆性についての第2法則,そして絶対0度における状態に関する第3法則を基本法則とする。これらの四つの法則を総称して熱力学の法則という。熱の本性は物体を構成する電子や原子核のような微視的な粒子の運動に求められるが,熱力学の法則は巨視的なレベルでの熱現象に関して,物体の微視的構造にかかわりなく厳密にしかも一般的に成立する法則である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

熱力学の原理、つまり基本法則は、まず熱平衡状態の存在を規定する熱力学第ゼロ法則、熱と仕事の関係を与える熱力学第一法則、熱の移動形態を与える熱力学第二法則がある。さらに、量子力学に基づき基底状態のエントロピーがゼロであるとする熱力学第三法則(ネルンストの熱定理)がある。

[宮下精二]

熱力学第一法則

物体の温度を上げるために、高熱源と接することでの熱流入による温度上昇と、仕事によって生じる運動の摩擦による温度上昇の二つの方法があることから、熱の移動はある種のエネルギー移動形態であることが明らかになった。この熱というエネルギー移動形態を含めたエネルギー保存法則を熱力学第一法則という。物体がもつ全エネルギーを内部エネルギーUとし、その変化を、外から加わった仕事d´Wと熱の移動d´Qを用いて
dUd´Wd´Q
と表すことができる。ここで、熱や仕事は状態を与えても一意的に決まらない量であり、数学でいうところの完全微分でないため、その変化量を表すのにダッシュをつけている(d´)。それに対し内部エネルギーは状態によって一意的に決まる量(状態量という)であるので、その変化を表すのにdを用いている。しかし、d´Wは仕事であり、状態量を用いて表すことができる。たとえば、体系の体積をV、その微小変化をdV、また体系に働く圧力をPとすると、熱力学第一法則はd´W=-PdVとなる。ここで、V,Pは共に状態量である。また、d´Qも熱力学第二法則から導かれる性質を用いると、温度TとエントロピーSを用いてd´Q=TdSと表される。

[宮下精二]

熱力学第二法則

熱の流れは高温部から低温部に向かって不可逆に起きることを表す法則である。この法則はさまざまな形で表現される。たとえば「外部になんら変化を残さずに、熱が低温部から高温部へ移動することはない」(クラウジウスの原理)や「外部になんら変化を残さずに、熱が全部仕事に変わることはない」(トムソンの原理)などである。両者は一見異なっているように思われるが等価であることが証明できる。この原理から、温度Tの定義を導入することができ、さらに熱の移動に関して、熱力学関数としてエントロピーという量Sを定義することができる。これらを用いると可逆過程ではd'QTdSとなる。温度とエントロピーの定義はこの関係を満たす範囲で任意性をもつが、通常、ボイル‐シャルルの法則で用いられる気体温度計の温度を採用する。熱力学第二法則は、任意の状態の変化に伴う熱の移動に対してdSd'Q/Tと表すことができる。この法則は時間反転対称性を破るものであり、そのミクロな起源に関して種々の議論がなされている。

[宮下精二]

熱力学の基本方程式

熱力学の第一、第二法則は次の関係
dUTdSPdV+μdN
にまとめられる。ここで、TdSは熱の移動をエントロピーで表わしたものであり、-PdVは仕事の代表としての圧力による体積変化に伴うエネルギーであり、μdNは粒子数の変化に伴うエネルギー変化を表す項である。ここでμは化学ポテンシャルとよばれる。この関係から偏微分に関する関係を用いることで、すべての熱力学的関係が導かれる。たとえば圧力一定下での比熱(定圧比熱)をCP、体積一定下での比熱(定積比熱)をCV、とすれば、偏微分に関する恒等式

から

が得られる。この関係は物質によらず一般に成り立つ。たとえば、理想気体の場合、この関係は状態方程式PVnRTを代入して利用すると、マイヤーの関係式として知られている

となる。

[宮下精二]

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精選版 日本国語大辞典の解説

熱力学の基礎となっている根本法則。第一法則は、熱はエネルギーの一形態であるという考えに立ち、エネルギー保存の法則を熱現象にまで広げたもの。第二法則は、高温から低温への熱の移動は不可逆で、その逆の変化を起こすためには外からエネルギーを与えなければならないということ。熱現象の不可逆性。第三法則は、絶対温度が零度の極限で、どんな物質のエントロピーも零になるということ。

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